神隠しの少女 | ナノ






「さて、とりあえず面子は揃った、ね」

ホルホースが連れてきた協力者達を見回して、茉莉香は青白い顔をしながらも力強く笑った。

「じゃあ、作戦を始めようか」

まず初めに行われたのはダンによる館の中の状況を探ることだった。花京院やじじい達がバラバラならばそのまま茉莉香が連れに往復し、ここで俺が肉の芽を抜く。一纏めで居る様なら全員一緒に連れてくるということだが…。

「その場合は誰か見張りがいるだろ?」
「うん、そうだろうね。多分見張りもかねて全員一緒に居る確率の方が高いと思う」
「掻い潜れるのか?」
「うーん…居る場所に寄る、かな。下にスペースがある所なら楽だと思うけど…地下だとちょっとキツイかもねー…」
「見取り図的には地下だと狭すぎるし、そこはねえんじゃねえか?」
「だといいんだけどねえ」
「…うげ、気持ち悪いな」
「ダン君どしたー?」
「館に着いたんだが…ケニーGのスタンドだな。館の中が訳の分からん空間になってて探り辛い」
「まあそこはホルホースさんお手製の見取り図で頑張ってよ」
「簡単に言ってくれるな…」
「脳みその中自由に動けるダン君なら大丈夫だって信じてるよー」
「やだ先輩信頼されてるう」
「ラバーソール、お前後でぶん殴るからな」
「ひでえ!」

言い合いをしながらもダンは着々と偵察を進めて情報を口にする。

「ケニーGは入り口から居一番近い階段の脇に隠れてるな。…一階には他に人の気配はない」
「地下は?」
「ちょっと待て………地下にも居なさそうだな」
「じゃあとりあえず皆上の階に居るんだね」
「ああ。…二階の一番デカいベッドルームに気配がある…これDIO様だな。見なくてもいいか?」
「ダンちゃんのビビりー」
「お前本当に後で覚えとけよ!見ろ私のこの冷や汗を!」
「はいはい。まあ他の所に居なけりゃそこで確定なんだし、とりあえずそこは入らないで他見て回ってよ」
「分かった」
「…ここは…下は図書館かな?」
「多分そうだろ」
「やっぱりあそこに居るみたいだな。ジョースター共はもとよりヴァニラとテレンスの姿も見えないぞ」
「オッケー、じゃあダンちゃんは一旦ラバーズ戻していいよ」
「分かった」

大きく息を吐いたダンはラバーズを戻そうとしているのか、未だに険しい顔をしている。茉莉香は見取り図を眺めながら、口を開いた。

「じゃあ、本格的に奪還の作戦を説明するよ」

まず、茉莉香が下の図書館スペースにラバーソールとンドゥールを連れて潜入する。二人はそのまま待機で、茉莉香一人が上のベッドルームに突入。全員を連れてこれそうならば、確保した後二人を連れて戻ってくる。それが叶わない場合はDIOを引き離し、床を取り除き全員を下に落とす。場合によってはンドゥールの援護を受けながらラバーソールのスタンドで全員を包んで退避する。

「と、言う感じで行こうかと思うんだけど」
「ヴァニラと執事さんも連れてくん?」
「テレンスさんはともかくヴァニラは確保しときたいね。テレンスさんは外に出たらこれと言って打つ手がないだろうし、脅威ではないけどヴァニラはヤバい。どれくらいヤバいかって言うととにかくヤバいとしか言えないくらいヤバい」
「分かるような分かんねえようなヤバさだな!」
「しかしそれこそヴァニラにスタンドを使われると不味いのではないか?」
「そこでラバーソールのスタンドを使うタイミングが重要になるわけですよ!テレンスさんは無理でもヴァニラだけは絶対に皆と一緒にスタンドで包み込んでほしい。DIOから怪我をさせない…最低でも死なせない様に指示が出てるはずだから、一緒くたに包んだら巻き込む可能性があってあいつはスタンドを使えない!筈」
「…確信じゃねえのかよ」
「こればっかりはやってみないと分からないからねえ。といってやらない訳にもいかんのですよ」
「…お前が危ねえんじゃねえか?」

俺の言葉に全員がこちらを向く。こいつらは何故か茉莉香一人がDIO達に向かっていくことを当たり前の様に捉えているが、それはどう考えても危険が伴う筈だ。しかしこちらを見る奴らの目には不思議そうな色が浮かんでいる。

「危ねえの?」
「うーん…まあ多少怪我はすると思うけどそんな大怪我はしない、と思うなあ」
「DIO様がお前に大怪我を負わせるとも思えんしな」
「うん。私のスタンドならとりあえず皆がここから離れる時間位なら稼げると思うけど。あ、ケニーさんが邪魔になるかなあ、そうなると」
「消しておくか?」
「タイミングによっては二人が居るのばれそうだしなあ。逃げる時に余裕が有ったら伸しといてもらってもいいですか?とりあえず逃げるだけならンドゥさんに頼ってもいいわけだし。見えてないンドゥさんからしたら幻覚も意味を成しませんよね?」
「ああ。分かった」

さらりと意見を流されて、釈然としないままに話が進んでいく。

「まあ細かい所はその場その場で臨機応変に行こう。経験豊富な二人なら何とかしてくれるって信じてるぜ!」
「責任重大だなー」
「まあここまで来たのだ、やるしかあるまい」
「…俺はどうしたらいいんだ?」

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