神隠しの少女 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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「こちらが新製品となっておりまして…」
「ああ、いいですねえ」
「ええ、クウジョウ様が以前イルカや海の生き物のものは無いのかと仰っていたので作ってみたのですが…中々好評ですよ」
「へえ、それはよかった。私も一つ貰おうかなあ」
「ありがとうございます。ああ、最近ジュエリーなども始めたのですが…こちらのチェリー型のピアスなど如何でしょう」
「…よく覚えてますよねえ」
「それが仕事ですので」

いつも結構な量を買い込むから上客認定されているのだろう。途切れることのないセールストークに内心苦笑しつつ、承太郎と典明君にプレゼントしてやろうと思っているので、この長話も功を奏していると言えるだろう。

「じゃあそのイルカの入ったキーケースとピアスは貰おうかな」
「はい。お連れ様の方は…」
「ああ、そろそろ決まったかな?」

立ち止まってジッとしているドッピオ君に近づく。

「何かいいもの有った?」
「わ!あ、はい!これなんかどうでしょうか!」

ドッピオ君の手元を覗き込むと何本かのベルトが有った。シンプルだが細工は丁寧で悪くはないだろう。

「うん、いいんじゃないかな」
「ボスは喜んでくれますかね!」
「喜ぶ喜ぶ。毎日つけちゃうんじゃないかなあ」
「…それは、嬉しいですね!」

本当に嬉しそうな顔をするドッピオ君に天使はここに居た!と心の中で叫びつつだらしなくなる頬の筋肉を叱咤する。

「色はどれにするの?」
「黒か白が使いやすくていいかなあって」
「そうなんだ。確かにどっちも良さそうだね」
「うーん…どっちにしよう」

さらに数分考え込んだドッピオ君が黒を手に取ってレジに向かった。


「はー!今日は楽しかったです!」
「そりゃよかった」

晴れ晴れとした顔をするドッピオ君の頭を撫でてやる。ぱちくりと瞬く大きな目が可愛くてさらに追加で撫でておいた。
買い物が終わって、タクシーで移動したのに運転手に絡まれたり、店から出た途端絡まれたり大変だったが…この顔が見れたのなら…うん、報われたと思っておこう。

「ご馳走になってしまって…いいんですか?」
「ん?ああ、いいのいいの。ここそんな高くないし」

心配そうなドッピオ君に手をひらひらとする。本当にそんな高い所でもないしねー。あんまりお金使う機会もなかったし。

「あ、あのマリカさん!」
「はい?」
「会った時は本当ごめんなさい!マリカさんはボスが言っていた通り頼りがいのある素敵なお姉さんでした!」
「…ああ、はい。ありがとう」

まだ引き摺るか、と思いつつも本当に申し訳なさそうなドッピオ君が可愛くてついつい笑ってしまう。店員さんにドルチェが運ばれてきて、のんびりと会話を交わして…そろそろいい頃合いだろうか。

「ドッピオ君、はい」
「え?」

鞄の中から包みを出して手渡す。首を傾げるドッピオ君にジェスチャーで開けろと伝えた。

「これ…!」
「ボスとのお揃いなら喜んでもらえるかなって」

先程ドッピオ君が買ったのと色違いの白いベルトを見て彼の目に涙が浮かぶ。

「ありがとう、ございますぅ…!」
「そんな喜んでもらえると贈った甲斐が有るなあ」

泣き出してしまったドッピオ君を宥めて、食事を終えて外に出る。外は日が落ちて大分肌寒くなっていた。

「じゃあ、今日はこれで。気を付けて帰ってね」
「はい!…あの!」
「ん?なにかな?」
「また、一緒にお買いもの行ってくれますか?」

あざとい位可愛らしい上目づかいでそう尋ねるドッピオ君にディアボロの気持ちが痛いほどわかってしまった。



私の可愛いドッピオ
今ほどお姉ちゃんと呼んでほしいと思ったことはない


→おまけとあとがき

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