神隠しの少女 | ナノ






久々のマライアさんといちゃこいてたらいつの間にかルクソールに着いてました。マジ美人さんと過ごしてると時間の流れはやい。っていうかこのままマライアさん連れてこうぜ!いくら美形ばっかとはいえ流石に華が無さ過ぎて辛いよ!声に出せば承太郎に叱られるのは目に見えていたので心の中だけで真剣に訴えておく。

「財団の人間と連絡が取れた。明日の昼にはこちらに来るそうじゃ」
「では部屋割りはどうしますか」
「はいはーい!私マライアさんと一緒がいい!女同士水入らずで!」
「でも…茉莉香と二人っきりって言うのも心配だな。彼女がまた心変わりするとも思えないし」
「あら、言ってくれるじゃないのお坊ちゃん。女にも二言は無いのよ?」

ズイッとマライアさんに距離を詰められた典明君が赤くなってたじろぐ。そりゃ思春期の少年がこんな美人さんに至近距離で見つめられたらときめいちゃうよね!言葉に詰まって意味もなく手を動かす典明君の可愛さに思わずにやつく。

「じゃあ俺と!」
「あんたは嫌。…そうねえ、承太郎ならいいわよ。DIO様には劣るけど中々いい男だし」
「そうなったら私夜そっと部屋空けますね!」
「なんでだよ!」
「やだなあポルナレフ…美人のお姉さんと思春期真っ只中の男の子だよ?一夏ならぬ一冬のアバンチュール!私、有りだと思います!」
「その役俺でもよくねえ!?俺もアバンチュールしたい!」
「何馬鹿なこと言ってるんだ!茉莉香もそんなはしたないこと言うんじゃあない!」
「あ、もしかして典明君も立候補したい?なんなら三人で泊まる?私ポルナレフと隣で聞き耳立ててるよ?」
「そ、そういうんじゃなくて!」

今度こそ真っ赤になって狼狽える典明君にニヤニヤしてると、ゴツンと頭に衝撃が走る。

「馬鹿なこと言ってねえで行くぞ。部屋割りはお前とあの女とジジイだ」
「ジョースターさん羨ましいぜー」
「馬鹿なこと言っとらんでさっさと動け馬鹿もんが」

ポルナレフもジョセフおじいちゃんに殴られて渋々歩き出す。私は未だにジンジンと痛む頭を抱えながらジョセフおじいちゃんの後をついていった。


「マライアさん、マライアさん。アレッシーさんってどこいるか知ってます?」
「……ここで二手に分かれてそれぞれ襲う筈だったからこの辺にいるんじゃない?私が一緒に居るの見てたら逃げたかもしれないけど」
「見てなかったら近くに居るってことですよねえ…」

チラリと洗面所の方を見る。水音がしているしジョセフおじいちゃんはまだシャワー中だろう。隣に座るマライアさんににじり寄って耳元に顔を寄せる。

「…大丈夫なのそれ。怒られるんじゃない?」
「いやいや、たまには私我儘言っていいと思うんですよ!」
「…まあ、楽しそうだしね。いいわよ、手伝ってあげる」

にやりとお互い顔を見合わせて笑う。そうと決まれば早く寝なければ。


翌朝。時計の針は六時を指している。ジョセフおじちゃんの方を見れば、まだ気持ちよさそうに寝ていた。例のごとく寝付けなくてまだ眠いが、その寝顔の可愛さに目が冴えていく。年よりのくせに可愛い寝顔とかなんだこれ。なんだこれ。

「…何朝から気持ち悪い顔してるの」
「気持ち悪いって酷いなあ」

起きてきたマライアさんと小声で会話をしながら支度をする。もう一度ジョセフおじいちゃんが良く寝ているのを確認して、私はスタンドを発動した。

「アレッシーさんおはようございます!朝から待ち伏せとは精が出ますね!えらいねえ」
「茉莉香!…な、なに企んでんだ」
「開口一番企んでるとは人聞きの悪い。久々の再会にそれは無いでしょう」
「館で碌でもねえことしてる時の顔してよく言うぜ…」
「おや、そうでした?」

いけないいけない、と頬を揉んでみる。この後のお楽しみについつい気が緩んでいるようだ。

「で、承太郎たちと戦うつもりですか?」
「…もしかしたら上手くいくかもしれねえだろ」
「この場合上手く行ったかもしれなかっただろ、の間違いですよねえ。私に見つかってしまったわけですし」
「…くっそ、マライアの奴喋りやがったのか」
「ええ、無事和解出来まして。で、アレッシーさんはどうします?穏便にいくか、それとも手荒にされたいか」

にこり、笑ってプレッシャーをかける。私とアレッシーさんの立ち位置的に彼は私の影と交わることは出来ない。

「わ、分かったよ。承太郎たちには手を出さねえ。拘束されろってんならされるし、逃がしてくれるんならもう関わらねえ。得られもしねえ大金の為に無理はしねえよ」
「聞き分けが良くてとても助かります。…では、拘束される前に一つ力を貸していただきましょうか」
「はあ?」

訝しげな顔をするアレッシーさんに、頼みごとの内容を伝える。

「…出来たのはあの一回だけでやれるか分からねえぜ?」
「無理だったらさっさと終わらせて、マライアさんと一緒に財団に行ってもらいますから。それならそれでいいですよ」
「…えらくねえ。まったくえらくないぜお前…」
「そんなこと百も承知ですよ」

肩を落とすアレッシーさんの手を取って歩き出す。さて、財団の人達が来るまであと何時間かな。



「…何かあったんですか?」
「いや、何もなかったぞ。なあ茉莉香?」
「うん。何もありませんでしたよ」

マライアさん達を引き取りに来た財団の人が私たちの答に曖昧に頷いた。私たちの後ろの意気消沈した四人を見て不思議そうにしている。その背を押して外に出すと、前を行く二人に手を振った。

「ではまた!」
「約束破ったら承知しないわよ」
「疲れた…疲れたぜえ…」

歩き去って行った二人を見送って、私とジョセフおじいちゃんは一度顔を見合わせて笑い合った。



秘密のお遊戯


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