神隠しの少女 | ナノ






私を呼びに来た承太郎によってンドゥールさんが起きたことが知れてしまい、急遽また病室が狭くなる。個人的にはそれなりに重傷なのだから今日一日くらい休ませてあげてもいいと思うのだが…ホリィママの時間制限がなくなったとはいえ、敵の本拠地であるエジプトに居るということで皆気が急いているらしい。

「ふむ…随分とバラエティーに富んだ面子の様じゃな」
「今言った情報に嘘偽りはないがそれらも全ておれが体験したものではない。お前たちも知っている通りスタンド能力を知られることは死活問題につながるからな。詳しい発動条件や能力に誤りがないとは言えんぞ」

ジョセフおじいちゃんがこちらを見たので頷いておく。ンドゥールさんが言った情報に偽りはない。基本的には怪しい物には触らないとか、変な挑発に乗らないとかすればさっさと片付くだろう。…こうやって考えると9栄神のスタンドって受身なものも多いよなあ。敵対すると面倒だけど避けようとすれば避けられるものも多いし。
アヌビス神はチャカが拾う前に私が回収すると言う手だてもあるが…あれスタンドなら触っても平気かどうかが分からないんだよねえ。正直アヴドゥルさんにとかしてもらうのが一番案牌だと思うんだけど。チャカが拾ったのをポルナレフが倒して…合流したら溶かして貰えばいいかなあ。
なんだか自分でも適当になったな、と思うけどいい感じに肩の力が抜けたと思っておこう。

「DIOのスタンドについてじゃが…」
「DIO様のスタンドについてはおれは何も知らない」

言葉を遮るようにきっぱりと言い切ったンドゥールさんに部屋の空気が凍った。ジョセフおじいちゃんの目に疑惑の色が浮かぶ。

「…貴様はDIOの側近じゃったんじゃろう?」
「先程も言ったがスタンドの能力が敵にバレると言うのは死活問題だ。DIO様ほどの方がそうおいそれと見せる筈があるまい。こうなる可能性も考慮なさって我々に知らされてはいない。疑うのならばお前のスタンドで見てみるといい」

嘘だろうな、と思う。DIOは良くも悪くも好奇心も向上心も旺盛だ。どこから来るのか分からない、素早いゲブ神は彼の時を止める能力を試すには打ってつけである。試していない筈がない。それでも尚そう言うのはやはり捨てきれぬ彼への忠誠心なのだろう。
ここでジョセフおじいちゃんがスタンドを使う、と言ったら止めるべきか否か悩む。嘘をついているのがばれたらンドゥールさんの心象は最悪になる、しかし上手く止める言い訳も浮かばない。どうしようかと考えていたが、ンドゥールさんが自分から言い出したこともあってか、ジョセフおじいちゃんは分かった、というだけでテレビを持ってこいとは言わなかった。

「そこまで言うのなら信じよう。他の9栄神の情報に間違いは無いようじゃしな」

甘い、という抗議にジョセフおじいちゃんは手を振って制止する。

「…協力感謝する」
「…茉莉香が望んだからおれはそれに従ったまでだ。礼を言われる筋合いはない」

その言葉を最後にジョセフおじいちゃんは腰を上げてホテルに行こうと言った。出来たらもう少し残っていたかったが、もう面会時間は終わっているし残ることは許されていない。

「明日ここを出る前にもう一度顔を出しますね」
「ああ、分かった」
「勝手にどこか行ったりしないでくださいよ?」
「この重症だぞ?動ける筈があるまい」
「ンドゥさんだと動けそうだから怖いんですよ。とにかくちゃんと体休めてくださいね」
「分かった分かった」

面倒くさそうな素振りで早く行けと促される。少し名残惜しい気もしたが、ちゃんとベッドに横になったのを見届けて病室を出た。

「あ」
「どうした?」
「言いそびれてたけど未来予知と変身能力のスタンド使いはもう倒しちゃったわ」

はあ!?という声があちこちから上がる。隣から来る承太郎の刺すような視線に慌てて弁解を始めた。

「いや、ちょっと息抜きに散歩に出たら居て…。あ、館で見かけてたから顔は知ってたんだけど。で、普通にサクッと」
「普通にサクッてお前なあ…」
「で、そいつらはどうしたんだ」
「多分病院に運ばれたと思うんだけど。…もしかしてここかな?」
「…先に行ってなさい。わしは病院に確認してくる。そいつらの名前は?」
「オインゴとボインゴ。結構歳の離れた兄弟で、ボインゴは私よりも年下」
「ふむ…分かった。道中気を付けるんじゃぞ」
「はーい」


ホテルについて少し経つとジョセフおじいちゃんも合流した。やはりあの病院に運ばれていたらしい。重症というほどではないが、思っていた以上にボコボコになっていたらしくどうやったのか聞かれて説明が面倒くさかった。

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