神隠しの少女 | ナノ






「…お前が居る以上私の仕業だということは直ぐにバレそうだったからな。お前のスタンドは私にとっては天敵の様なものだ。だからといってまずお前を始末したとしたらこっちの命が危ないしな」

…まあ、確かに。私がダン君の能力を知っている以上、急に大怪我を負って死んだりしたら彼の仕業だと直ぐ見当がつくと考えても不思議ではない。ダン君が何処に隠れていようと私が見つけ出せないはずもないし、真っ先に私を狙えばDIOの怒りを買う可能性もある、と考えても不思議ではない。

「それにDIO様からの指示でもあったしな」
「DIOからの?」
「ああ。ま、単純に言えば見せしめ、だ」

…なるほど。ただ肉の芽を暴走させてエンヤ婆を殺すだけより、仲間がエンヤ婆を始末した…と言う方が承太郎たちに与える衝撃は大きいと考えたのだろう。そしてその筋書き通り、DIOが見捨てたのだと、信じていなかったのだと明言されても尚エンヤ婆はDIOを信じて死んだ。DIOのカリスマ性も残虐性も分かりやすく伝わったと言える。案外演出好きなDIOらしい考えだ。

「でもっていうことは私が居ても居なくてもダン君はあそこで姿を現してた、ってことだ」
「まあそうなるな」

とりあえず納得はした。…でもそれって。

「ダン君も捨て駒でしかなかったってことだよねえ。姿を現さなければ全滅まで追い込むことも可能だったのにわざわざ姿を表せさせるなんてさあ」

J・ガイルとホルホースさんのように二人一組で来て、ダン君が隠れて片方が気を引いていたとしたら全滅はほぼ確定していたはずだ。もちろん守銭奴かつああも堂々とスタンド能力を披露してしまうダン君の自意識過剰な性格からしてわざと一人で来たのかもしれないが…確実性を求めるのなら無理やりにでも組ませればよかったんだし。DIOがダン君の性格を把握していなかった…それとも、承太郎たちが勝つ可能性を、残した?
ジョセフ・ジョースターにスタンドが発言した、と伝えた時のDIOの横顔を思い返す。あの時DIOの顔に浮かんでいたのは、ジョースター家に対する警戒と…僅かだけれど確かな高揚だったんじゃないか?それこそ天を突くような高いプライドを持つDIOのことだから本当に自分の手で因縁に終止符を打ちたいと望んでてもおかしくは無い、か。
そこまで考えていると、横でダン君が嫌そうな顔をしていることに気付いた。

「え、なに」
「いや…嫌なことサラッと言ったなお前」
「ああ…ごめん。でもほら!あこそまでハッキリ言うと忠誠心とかバッキバキに折れるからこっちに身柄拘束されてもDIOの為に動こうとか思わないじゃん?」
「…まあな。って身柄拘束されるのか」
「今までのスタンド使いも大体財団の方で身柄確保されてると思うけど」

私の言葉にジョセフおじいちゃんが頷く。

「うむ。あのおかしな車のスタンド使いも、あの後財団で確保したと連絡が来ておる。流石に野放しにするわけにはいかんからな」
「…まあ衣食住が確保されているならいいけどな」
「お、諦め早いねえ」
「お前がそうなる様に心を叩き折ってくれたからな」
「…うん、なんかごめんね」

乾いた笑いを零しつつ、後何か話すことは有ったかな、と考える。

「…聞きたいことがある」
「なんだミスタージョースター?」
「DIOのスタンドについて何か知っておるか」

その言葉にダン君は何かを考えるようにして…私を見た。

「だってよ」
「サラッとこっちに振ったね。…でも正直よく分からないなあ。エンヤ婆をわざわざ始末させたってことは見せしめ以外にもなにかしら隠したいことが有ったのかもしれないけど…。私が知っている限りそんな隠すほどの能力なんてあったかな」
「…ってお前なんか知ってんのかよ!」

ポルナレフが私を指差して叫ぶ。その声の大きさに思わず耳を塞いだ。

「えーっと、知ってるっちゃあ知ってるけど」
「何で今まで言わんかったんじゃ!」

ジョセフおじいちゃんまで…そんな大きな声出さなくても聞こえるってーの。

「…今の時点で言う必要がないと思ってさあ」
「対策立てたりとかあんだろーが!」
「対策ねえ。…私が知ってる限りDIOの能力って凄いシンプルなんだよね。今から作戦立てるよりとりあえず今くる敵に集中した方がいいってくらい」
「ああ!?どういうことだよ!」
「茉莉香、説明しろ」
「説明って言うか…ほぼスタープラチナと変わらないんだよね」

私の言葉に皆が固まる。その顔をぐるりと見渡して。

「パワーとスピード、正確性に秀でた近距離型スタンドなんだよ、私が知ってる限り。つまり承太郎が苦手とするスタンド…典明君みたいな遠距離攻撃が出来る相手に弱いと思うんだよねえ。もちろん吸血鬼だからDIO自身の回復力も凄いけど…身内にほぼ同じ能力が居る時点で対策は立てやすいと思ってたんだよ」

だからもう少し近づいてからでいいと思ってたんだけど、と肩を竦める。

「…まあ、エンヤ婆の口をわざわざ塞いだ以上、何かあるのかもしれないけどね」

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