神隠しの少女 | ナノ






私たちはとりあえず人の目を逃れるために近場のホテルへと向かった。幸いにもすんなりと部屋も取れ、一安心と言った所だろうか。

「さっきの行動はどういうことだ」

承太郎の鋭い視線に思わず目を逸らす。仕方のない事だとはいえ、そんな目で見られると心が痛い。

「皆が集まったら話すから」
「…そうか」

納得がいかないのがよく分かる声音に思わず苦笑してしまう。

「承太郎は私が信じられない?」

承太郎の肩がピクリと揺れた。我ながら狡いことを言っているな、と思う。こんな風に言われて尚承太郎が私を責められないのを知っていて。んなわけないだろ、と眉をひそめた承太郎にごめん、と心の中で謝っておいた。
コンコン、とノックの音が響く。チェーンを付けたまま確認して、典明君とダン君だと分かってから扉を開いた。

「いらっしゃい」
「思ったよりいいホテルだったね」
「…そんなことよりさっさと解け」

ブスっとした顔のダン君の体には典明君のハイエロファントグリーンが巻き付いている。苦しがるほどではないがキッチリと縛られた状態に吹き出せば舌打ちをされた。

「大体攻撃する意思がないって言ってるのに酷いだろ!私の人権どこに行った!?」
「えーダン君に人権とかあったっけー?」
「酷い!傷ついたぞ!慰謝料を要求する!」
「しゃーないなー。金平糖あげるよ金平糖」
「安っ!」

唇を尖らせるダン君にあーんと言いながら金平糖を差し出すとぱくりと食べる。

「あ、この安っぽい砂糖の塊的な味懐かしいな」
「人があげたものになんつー失礼な感想を。あ、食べたから慰謝料支払ったってことで」
「あ!くそ、やられた!というかまさかの一粒か!」

地団太を踏むダン君を指差して笑ってやっているとダン君の後ろから呆れた顔をするポルナレフとジョセフおじいちゃんが現れた。

「…なにやってんだお前ら」

おっと、つい懐かしい友人との会話に素が出てしまった。承太郎と典明君も心持ぽかんとしているように見える。やばいと顔に出ていたのか今度はダン君に笑われた。持っていた金平糖を力いっぱい顔面にぶつけておく。

「なんか私への対応本当に酷くないか!」
「久々に会えた嬉しさとさっきの行動へのお仕置きです!」

ぎゃあぎゃあと騒ぐ私たちを尻目に皆部屋に入る。パキパキと粉になっていく金平糖にもったいないことしたな、と申し訳ない気持ちになった。

「…さて、貴様には色々と聞きたいことがある」

真剣なジョセフおじいちゃんの声に私とダン君も顔を引き締めた。皆が立って取り囲むベッドに二人並んで座る。

「お前も座るのか?」
「んー…一応ダン君に危害が及ばない様に?」

まあこの状況でラバーズ仕込んでたりしたら速攻北極にでも送り込んでやるけど。そんな事を考えつつ固い顔をする皆を見回して内心ため息を吐く。
さあ、これからどうしようか?



踏みつぶされた金平糖
私も粉々に砕けてしまわない様に

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