神隠しの少女 | ナノ






だらだらと歩いていると承太郎たちの姿を見つけた。囲まれていたホル・ホースさんが私を見つけ指差す。
振り返った承太郎が早足に近づいてきて私の体を確かめるように何度か叩いた。

「…どこも怪我はしてねえな」
「ん。心配かけてごめん」
「お前!どこ行ってんだよ!」

既に半泣きになっているホル・ホースさんが悲鳴混じりに訴えかけてくる。大方迎えに来たものの会えなかった承太郎に八つ当たりされていたのだろう。

「いや、ただ待ってるってのもなんだしこっちから行こうと思ったら間違えちゃった」

ごめんね、と笑うと皆から凄い脱力されてしまった。…なんか申し訳ない。

「と、とにかく!茉莉香は無事戻ってきたんだ!これでチャラだろ!」
「何を言ってるんだ。茉莉香を攫ったのはお前だし、アヴドゥルさんの死因はお前の弾丸によるものだろう」
「うっ…!」
「もういい、俺が判決を言うぜ」
「ポルナレフさん」

チャリオッツを繰り出そうとするポルナレフを呼ぶ。視線だけを向けたポルナレフに肩を竦めた。

「ホル・ホースさんは館の面子でも古株ですから。情報引き出してからの方がいいかと」
「お、おお!それがいい!」
「そんなのお前が喋ればいいだろ!」
「はあ。と言ってもDIOは私とジョースター家の事知っていましたから。元々居たスタンド使い達は知ってても後の方から来た人は知りませんし」
「そうだ!俺は色々知ってるぜ」
「だが…アヴドゥルはこいつに…!」

肩を震わせるポルナレフに私も眉をひそめる。僅かに顔を背け悲しみの表情を作りつつ、他の三人の様子を窺う。…誰もが悲痛な面持ちだが、こちとら承太郎と四年も家族をやっているのだ。彼のその顔が演技かどうか位は分かる。気がする。
…んー、多分アヴドゥルさんは生きているんじゃないかな。承太郎はこう見えて素直な子だから本当に彼が死んでいたらこうも冷静ではないだろう。もっと怒りを露わにして居る筈だ。
これで彼が本当に死んでしまっていたら流石にホル・ホースさんにもなんらかの制裁は必要だと思うが…重症程度なら構うまい。原作通り女帝が助けに来るのを待とう。

「…分かった。だが、こいつが二度とは向ってこない様に痛めつけるくらいならいいだろう」

その言葉にホル・ホースさんが助けを求めるようにこちらを見てくるがそっと目を逸らす。…うん、まあもし女帝が間に合わなかったら死んでてもおかしくないわけだし?それくらいは許容範囲だよ、うん。
女帝が間に合うといいね!と心の中で応援しつつスタープラチナを出す承太郎を眺める。今日もスタープラチナは格好いいなあ。
拳が振り上げられた瞬間飛び出してきた女が承太郎に抱きつく。誰もがその姿に目を奪われた好きにホル・ホースさんは馬に飛び乗った。…おい、それどこから調達してきた?
目を離した一瞬の間に現れた馬に飛び乗ったホル・ホースさんが遠ざかっていく。…本当あの馬タイミング良すぎだろ。私が疑われたらどうしてくれる。

眺めている間に承太郎が女を振り払った。落ちていた石に擦ったのか血を流す女にジョセフおじいちゃんが布を巻き付けた。…中身があれじゃないって知ってたら私も同じことするんだけどな。
本体を想像して少しげんなりとする。これからポルナレフを襲うショックを想像すると同情の念が湧き上がってきた。

一息つき格好いいことを言い出したポルナレフを皆で見つめる。…勝手なことすんなって多分私と君だけには皆言われたくないと思うぞ。さっきの優しい気持ちを返せ。

私たちの後ろをとぼとぼと付いてくる女性をチラリと振り返る。ここで正体を暴いてしまってもいいが…。正直面倒くさい。
薬が未だに抜けきってはいないのか僅かに頭痛もする。ジョセフおじいちゃんがスタンドを使いこなす上で必要な試練なんだよ…と適当な言い訳をしつつ私は承太郎の側へ歩を速めた。

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