神隠しの少女 | ナノ






ケーキを食べ終えるとDIOは目が冴えたと読書を始めた。それにより私は手持無沙汰になってしまう。当初の目的通り街をうろつくか、図書室から本を持ってくるか。はたまたテレンスさんとゲームをするか。いっそこの館を探検するのもいいかもしれない。ああ、でも餌の女の人とかと会うのは嫌だな、変に情みたいなものが生まれてしまいそうだ…なんて考えていたら、DIOに声をかけられた。

「なに?」
「お前のスタンドはどう言ったことが出来るのだ」

瞬間移動だけなのか?と聞いてくるDIOにどう答えるか悩んでしまう。

「えーと、私だけじゃなくてモノも移動できたよ」
「ほう」
「後、訳の分からない世界につながってた」
「訳の分からない世界?」

興味がそそられたのか本からこちらへと視線を移す。

「うん。私の望むように環境が変わって…後時間の流れも変えられるみたい」
「ふむ、興味深いな」

何かを考え込むDIOの後ろにそっとスタンドを出す。見えないからバレないとは思うがついつい息をひそめるのは人の性だろうか。一昨日入った夜の原っぱを思い浮かべながらDIOに触れさせると、一瞬にして消え失せた。そして私に手を伸ばすスタンドに触れ、私もあの世界へと入り込む。

「…これはどういうことだ」

入った瞬間DIOに首根っこを掴まれた。驚いたのは分かるが、こんな猫の子を持つような掴み方はやめて頂きたい。というか。

「息が苦しいです…」

そういうとやっと離されて、地面に尻餅をついた。

「いたい…」
「五月蠅いやつだ」
「DIOのせいじゃないか…」
「何か言ったか」
「何にも言ってません」
「ふん。…で、ここはどこなのだ」
「さっき言ってた私の設定した世界の中です」
「ほう…。現実とあまり変わらんな」

そこらに落ちてる石を握りつぶしながら頷く。…それ潰す意味は有ったのかい?

「時間の設定は現実より早く設定してあるよ」
「早く?」
「うん、アバウトだけどとりあえず現実での一分がここでの五分くらいにしてある…と思う」
「何故そんな不安げなんだ…」
「だって入ったの二回目だし。さらに言えば人入れたの初めてだし」
「そんな曖昧な物の中によくもこのDIOを入れられたものだな…!」
「まあ人生何事も経験を積んで分かっていくものじゃない」

テレンスさんもそう言ってたさ!(彼が言ったのはお裁縫に関してだけどね!)

「全く、お前と言うやつは何故そうもマイペースなんだ…」
「あ、それよく言われるな」

そう返せばため息をつかれる。

「このDIOの前でその態度…大物か馬鹿かそのどちらかだな。まあ、迷うことなく後者だろうが」
「酷い!大物かもしれないじゃん!」
「ありえんな」

嘲笑うDIOにむかっ腹が立ったので、極寒の世界を想像してみる。凍えるがいいさ!

…だが、実際に凍えたのは私だった。

「さ、寒い…」

一面の銀世界。吹き荒ぶ雪に慌てて元の原っぱに戻す。それでも寒さが身に残っていて思わずDIOにくっついた。

「何をやっているのだお前は…」
「DIOだけ凍えさせたかったのに…!」

局地的に変えるのは不可能なのだろうか…。試しに遠くに見える木の周りだけ変えたい、と願うと木の周り…半径50m位が吹雪で覆われる。ふむ、局地的にも変えることは可能らしい、と一人頷いてみる。

「もう少し範囲狭められるかな?」
「さあな、やってみるといい」

じっと木が有ったであろう場所を見つめながら集中してみる。すると少しづつだが、吹雪の円が小さくなっていった。当初の半分くらいになった所で頭が痛くなってくる。

「と、とりあえずこれが限界かな…」
「よし、少しの間維持していろ」

簡単にそう言いのけるとDIOはさっさと吹雪に近付いていく。ズボっと円の中に手を入れて少し経つと、さっさと戻ってきたので、吹雪を消してしまう。

「見ろ」
「うっわ、痛そう」

伸ばした手は霜焼けか真っ赤になり、所々切れて血が流れている。綺麗な手なのに勿体ないな、と見ていると戻せ、と言われたので元の部屋を思い浮かべて、出たいと願えばそこはもうDIOのベッドの上だった。

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