神隠しの少女 | ナノ






現れた少し先にJ・ガイルの姿があった。壁であったろう残骸に隠れて覗き見る。
ポルナレフ達を追いつめるのを愉しんでいるのか、こちらに気付いた様子もない。…ちょっとこのまま私が手を下してやろうかな、と甘い誘惑に駆られるがポルナレフの為に踏みとどまる。彼の妹の復讐がしたいという気持ちは痛いほどわかるから。
そんなことを考えている内にJ・ガイルが悲鳴を上げた。どうやら一太刀食らったらしい。血を吹き出す傷口を抑えながらよろよろと歩く。その後ろをついていくと、近くに居た青年を斬りつけ物陰に隠れた。ポルナレフ達がまだ来ないのを確認して、近づいていく。

「やあ」
「お前は…!」

声をかけた瞬間殺気を向けられるが、私だと認識したのか例のにやけた笑みを浮かべる。

「久しぶりだなあ」
「そうだね、苦戦しているみたいじゃない」
「ああ、思ったよりも頭が回る野郎だったよ」
「そう」
「助けてくれねえか」

J・ガイルはにやにやと笑った。私が助けると信じて疑わないのだろう。そんな彼に私もにっこりとほほ笑んだ。

「嫌だよ」
「なッ!」
「私は、君の無様な死に様を見に来たんだから」

J・ガイルが一度目を丸くしてからナイフを握る。ハングドマンを向けてこないのはポルナレフ達のことを考えてか。まあ、ここに私たちしかいない以上ハングドマンは使い道がないが。

「ねえJ・ガイル」
「なんだ…」

警戒心丸出しのJ・ガイルに笑いだしたいのを堪える。もうすぐ彼らが来るはずだ、気づかれてはいけない。

「皮肉だねえ、今まで沢山の人を傷つけてきた君が今は逆の立場だ。…気分はどうだい?」

J・ガイルの顔が苦々しく歪んだ。

「あんな奴ら、始末をつける算段は出来てる。…その次はお前だ、楽には死なせねえぞ」
「…笑えない冗談だね、君はここで死ぬんだよ」

それだけ言って少し離れた所へと移動する。それと同時にポルナレフ達が斬りつけられた青年の所に辿り着いたのを見て危ないところだと息をついた。
それからは原作通り。乞食に囲まれるが典明君の閃きでポルナレフがハングドマンを貫いた。…まあ、ぶっちゃけた話典明君のエメラルドスプラッシュで済む話だとは思ったが。
ポルナレフのチャリオッツがJ・ガイルを串刺しにする。張り付けられたその姿を見て、小さくため息を一つついた。
きっとあれでは即死だろう。彼らが立ち去ったのを見届けてからJ・ガイルの遺体に近づく。さかさまになった男はやはりすでに死んでいた。

「…ザマアミロ」

この男に蹂躙された数多くの少女たちはどう思っているのだろうか。満足したか、足りぬと泣いているのか。そこまで考えて笑ってしまう。
…死んだ人間は、何も思ったりはしない。

J・ガイルの死に顔をもう一度眺める。見開かれた目に映った最後の景色はチャリオッツの刃だろう。…あの男が最後に見たのは一体なんだったのだろうか。一生分からぬ答えを想像しながら、私も彼らの後を追った。

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