「それにしても、よくポルナレフさんの単独行動を許したもんだ」
「許したっつーか無理やりだな。結局アヴドゥルと花京院はポルナレフを追ったし」
「そうなんだ。…承太郎たちも一緒に行動はしなかったの?」
「ああ。まあ、その為にリスクを冒してでもお前攫ったわけだしな」
ホル・ホースさんの言う繋がりが分からずに不審な目を向ければ、肩を竦めた。
「わざわざあそこに行ってお前を攫ったのはウェイター達に俺を目撃させるためだ。お前を攫ったのはJ・ガイルじゃなくて俺だって、な」
…ああ、なるほど。私を攫ったのがもう一方、つまりホル・ホースさんだと分かれば承太郎たちは多分こっちを優先しようとしただろう。それに対しポルナレフはJ・ガイルを追おうとする。
二人が一緒に居るか確信がない以上、ポルナレフは居てもたってもいられず単独行動に出る、というわけだ。
「にしても、運任せだね」
承太郎たちがポルナレフを説得するか、J・ガイル探しを優先すれば全員一緒に行動していたかもしれないのに。
「ポルナレフの野郎は猪突猛進タイプだからなあ。言うことは気かねーだろうし、承太郎たちはお前を優先すると思ってな」
まあ、確かに運任せでもあったがな、とホル・ホースさんが笑うのを見ながら、感覚が完璧に戻ったのを確認する。
「で、承太郎たちをどうするつもりかな?」
「…J・ガイルはともかく、俺は承太郎たちまでどうこうしようって気はねえよ」
「DIOの指示はジョースター一行の抹殺じゃないの?」
「そりゃあそうだが…そうなりゃ今度は俺がお前さんに狙われちまう。子供とはいえレディとやりあいたくはねえからな」
「…ホル・ホースさんらしい」
彼の能力は私とは相性が悪い。今の様に近ければ私が優勢だが距離を取られてしまえば不利なのは私だ。彼が私の射程距離外から狙ってきたら逃げるしかない。追いかけて、追いかけて何時かはどうにか出来るかもしれないが―――。
それなりに気心の知れた相手を、復讐のためとはいえ追い回すことは私としても真っ平御免だ。…まあ、実際に承太郎たちを撃ち殺された日には地の果てまでも追いつめるが。
「で、J・ガイルは?」
「そろそろポルナレフどもを追いつめた頃だろう。俺も合流しねえとな」
「近いの?」
「ああ、あの辺だ」
指をさした所は、ここと同じく荒廃した景色が広がっている。J・ガイルはあそこで待ち伏せしているのだろう。
「さて、承太郎たちと鉢合わせるとめんどくせえし俺はいくぜ。茉莉香はそこで迎えが来るの待ってな」
「そうだね、誰かさんのせいでまだ体だるいし」
「…悪かったな」
「今度パフェでも奢ってね」
肩を竦めたホル・ホースさんが立ち去ったのを見届けてから、立ち上がる。その場で何度か飛び跳ねて体の機能が戻ったことを確認した。
「さて、あのあたりね…」
J・ガイルが居るという辺りをジッと睨み付ける。
このままここでホル・ホースさんが言ったように承太郎たちを待っていてもいい。だが、それでは納得がいかなかった。
「あの下種の死に様、見届けたいもんなあ」
恐怖に引き攣って、無様に喚き散らす姿は今まで溜まっていた苛立ちを解消してくれるだろう。
別に彼に恨みがあるわけではない。あるのは生理的嫌悪感と、今でも憎いあの男を思い出させる、という八つ当たりにも似た怒りだ。
ただ、私はあの男の死に様を見れなかった。見れたのは、死体でありあいつの怯える姿ではない。それが、今も心残りだ。
馬鹿な感情だと思う。嫌な性格だとも。だが、あいつを思い出させるあの男の死に様を見れば、少しは気も晴れるんじゃないかと自分勝手なことながら期待しているのだ。
「承太郎たちにはなんて言おうかなあ」
隠者の紫で見たところに私が居なければ驚くだろう。まあ、上手く逃げてどこかに隠れていたとでも言おう。薬でスタンドがうまく使えなかったとでも言えばバレまい。
「さて、行こうか」
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