神隠しの少女 | ナノ






朝起きると承太郎はまだ眠っていた。普段なら私が動き出すとすぐ気付く彼が身動ぎもしない。やっぱり疲れが溜まっているのか、と少々心配になった。
とりあえず何か飲もうと備え付けのインスタントコーヒーを淹れる。想像以上に安っぽい味に眉を顰めたくなるが贅沢は言えない。そんなことを考えているとドアがノックされた。承太郎が起きない様にと慌ててドアを開けるとそこのは見覚えのある少女の姿が。

「…あ、あんた」
「えっと、とりあえず」

静かにしてくれ、という前に劈くような悲鳴をあげられてしまう。慌てて口を塞いだが遅かったようだ。

「…なんの騒ぎだ」
「じょ、承太郎!こいつだよ、船で見た幽霊!」

腕の中から抜け出した少女が承太郎に駆け寄る。それを見送りつつ本気で幽霊と思われていたのかと軽くショックを受けていた。…そりゃいきなり人が出てきたら驚くかもしれないけど幽霊はないじゃないですか。
きゃーきゃー言う彼女にどう説明をしようか悩んだが結局承太郎に任せることにした。だって近づくと顔青褪めさせるんだもんあの子。
悲しくなりつつロビーに下りると典明君とデーボさんが居た。

「おはよう」
「おう」
「よく眠れたかい?」
「うん」

空いている席に座りつつ他の人はまだだろうか、と考える。ジョセフおじいちゃんは朝早かったよなあ…。アヴドゥルさんも朝強そうだし。ポルナレフは…うん、寝坊するタイプだあれ。ラバーソールも寝汚いほうだし起こしに行くべきか逡巡する。
…ああ、でもいまだにポルナレフとは気まずい気がする。昨日も結局警戒されて終わったし。

「うーん…」
「どうかしたかい?」
「いや、朝ご飯どうしようかなって」
「朝っぱらから食いすぎると太るぞ」
「朝ご飯は一日の活力になるからいいんですー」

意地悪なことを言うデーボさんに唇を尖らせているとジョセフおじいちゃんとラバーソールが下りてきた。

「おお、珍しい」
「…年寄って朝早いよな」
「何か言ったか」
「いいえ、まさかスポンサー様に文句など」

軽口が叩けているようなので問題はあるまい。隣に座ったラバーソウルは大きく欠伸を一つ。

「あれ?でもラバーソールってポルナレフさんと一緒じゃなかった?」
「んー?何か拒否られた」
「ふーん。で、君ら今日中に日本に行くの?」
「あー?どうなってんですかねその辺」

ラフとはいえ一応ラバーソールなりの敬語の様なものでジョセフおじいちゃんに尋ねた。

「うむ。今日の便が取れそうじゃ」
「ぼく等は…」
「列車のチケットは明日になりそうじゃな。今日は休養日と言った所か」
「そうですか」
「ああ。…ホリィの心配がなくなった今無暗に急ぐのは得策ではないからな」
「俺としちゃ早く行きたいがな」

乱入してきた声に皆で振り向くとポルナレフが立っていた。

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