先程まで敵であった二人の男の後ろを承太郎は歩いていた。…アヴドゥルから呪いのデーボの話を聞いた時はこんな風になるとは当然のことながら露とも思っていなかった。
「ここらって何が美味いんかねー」
「知るか」
先を歩く男達に仲間が警戒しているのが分かる。それは承太郎も同じだった。後ろを歩く一行に癖毛の男――ラバーソールが振り返った。
「あんたら何か食いたいもんとかねーの?」
「…特にねえな」
「ふーん」
ラバーソールは自分から聞いてきたわりには興味がないのか曖昧に頷きながら周りを見渡している。
「ココナッツあんだけど!あれ土産に買ってこうぜ!」
「んなもん帰りに買え帰りに」
呪いのデーボは苦言を呈しつつラバーソールの頭を引っ叩いた。それに文句を言っているラバーソールは一見そこらに居そうなチンピラだ。しかし、承太郎を部屋から出した時の力強さは中々のものだった。
「なあ」
考えを巡らせているといつの間にかラバーソールが隣まで来ていたことに承太郎は驚いた。しかしそれを顔には出さずに視線だけ向ける。
「眉間、皺寄ってるぜ」
ニッと笑うラバーソールになんと返せばいいか分からず無言を貫く。それに詰まらなそうに口を尖らせたかと思えば道を挟んだ露店へと目を向けた。
「お、あそこ美味そうじゃん」
「ふむ…いいかお前たち」
ジョセフの言葉にそれぞれ同意の声を返す。承太郎もとりあえず今はなにかを腹に入れたかった。
道に広げられた机に各々買ってきたものを広げる。本来ならばそれなりに騒がしいであろう食事の時間もどこか緊張感が漂っていた。
「あのさ、もう少し楽にしねえ?食い辛いんだけど」
誰よりも大量に買い込んだラバーソールが言葉とは裏腹にがつがつと貪り食うのを見ながら一体どこにそれだけの量が収まるのか不思議に思う。
「…あのなあさっきまで敵だった奴と一緒にそう簡単に飯がくえっかよ」
呆れたように吐き出したポルナレフにラバーソールは不思議そうな顔をした。
「んなこと言うけどお前らだってDIO様からの寝返り組だろ」
「…てめえらとは違えよ」
「ああ。一緒にしないでほしいね」
「ああ、お前ら肉の芽組だっけか。あれグロいよなー」
けらけらと笑いながらラバーソールは図々しくもビールを一気に呷る。そして一転、真顔になった。
「で、色々と聞きてえことあると思うんだけどよ。何から話しゃいいんかね」
「…貴様らの仲間について、じゃな」
「ああ、ま、まずはそこだわな」
ぐしゃりと髪を掻いてラバーソールは目を細めた。
「つってもねーオレら自体他の奴らのスタンドについては詳しくねーのよ」
「ああ?」
「実際問題オレらからしたら商売道具だかんね。基本他人に手の内は明さねーの」
おっさんみたいに人に知られてる方が少ねえよなあ、とラバーソールは隣に座るデーボに話を振る。それに対しデーボは容赦なく拳を脳天に叩き込んだ。どうやらそれなりに気にしているらしい。
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