部屋に入ると仲間は皆驚いた顔をした。男を見ると一瞬警戒の色を見せたが、少女に対してはそういった所はない。どうやら面識があるというのは嘘ではなかったらしい。
そうこうしてる間に花京院とアヴドゥルが承太郎をとりなし、個々に座り始める。しかしオレは座る気にならずに立ったままだった。…何があるか分からねえしな。
そんなオレを少女は一度困ったように見たが気にしないことにしたらしい。
とりあえずオレは少女が一体どういう存在か気になったので尋ねれば承太郎の妹だという。血は繋がってないらしいが。
その血が繋がっていない、ということを不思議に思って尋ねれば両親祖父母共に亡くしたという。辛いことを言わせてしまったと謝れば苦笑するだけだった。
家族を亡くす、ということがどれだけ辛いかオレは身をもって知っている。こんな風にずけずけと無遠慮に聞かれたらオレだったら腹を立てるだろう。心が広いのか子供特有の順応性の高さか。
そんなことを考えている内に承太郎が本題を切り出した。それに対する少女、茉莉香の答えは呪いのデーボを引き抜くことだという。その言葉に全員が驚いている中茉莉香は話を進めた。
その話の中で承太郎たちの母親が危機を脱したことを伝えられる。それに皆が喜んだ。オレも喜ばしいことだと思う。だが、その女性と面識がないオレにとってはスタンド使いが派遣されていなかったその家の襲撃者を誰が退けたのか、ということが気にかかった。
茉莉香は彼女が退けたのかという問いに言葉を濁していたが、その状況からしてそれが叶うのは彼女か、その母親だ。承太郎たちから聞いた話から推測すると母親の方はそう言ったことができるような女性ではない。それが出来るのならばスタンドに苛まれるということは無かったはずだ。
一人茉莉香への警戒心を高めていると、花京院が旅をどうするのか、と言い始めた。そうだ、彼らは母親を、娘を救うために旅立ったのだ。ある意味既に目的は達したはずだ。ここで旅をやめてもおかしくはない。ならばオレはまた一人仇を取る旅に出ることになる。
寂しくなるな、と思っていたがオレの想像に反して皆旅を続ける気らしい。それに喜びを感じながら、視界の端で茉莉香が顔を曇らせた。
それから、茉莉香はデーボを引き抜くという話を再度始める。その内容も衝撃的だったが、それ以上にDIOとの面識があるという様な言葉に食いつく。しかしそれも軽く流されてしまった。
DIOとの見えない関係性、襲撃したスタンド使いを退けたであろうこと。そして年は離れているが友人関係であろうデーボに対し頭を撃ち抜いてしまえ、という様な事をサラッと言ってのける茉莉香に不信感が募る。
…こいつはジョースターさん達とは違う。どちらかと言えば一度だけ顔を合わせた、DIOに似たものを持っているのではないか。そんな考えが頭をよぎった。
そしていくらかの押し問答の後に茉莉香はもう一人来ているというスタンド使いを迎えに行ったらしい。部屋の中に何とも言えない空気が流れる。
「なあ」
言葉を発したオレに視線が集まった。
「茉莉香の言うことを信じてもいいのか?」
ポツリと落とした言葉に承太郎たちが険しい顔をした。
「どういう意味だ」
「お前らが家族だっていうのは分かってる。だけどよお、あいつはDIOとも関わりがある。そうだろ?」
「…確かに茉莉香とDIOの間にはわしらには計り知れん関係があるようじゃが」
「じゃあ、もしかしたらこいつは家の警護じゃなくその真逆って可能性もあんだろ!」
デーボを指させば嫌そうな顔をされる。しかしそんなことは気にしたものか。
「DIOはホリィさんを人質に投降しろって言いかねねえ奴だぜ!?そんな簡単に信じていいのかよ!」
「茉莉香は、家族だ」
「んなの、あいつがどう思ってるか分かんねえだろ!こいつにだって随分と気ぃ許してるじゃねーか!」
オレの言葉に承太郎が立ち上がる。その瞳には怒りと困惑が渦巻いているようだった。しかし、オレだって譲れない。決してただ誹謗中傷してるわけじゃない。こいつらの事を思ってなのだから。
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