「なあ」
「はい?」
後ろから声をかければ、前を歩いていた少女がちらりとこちらを振り向いた。隣を歩く傷だらけの男は何の反応もしない。眼中にないとばかりの行動に苛立ったが、声をかけたのは少女の方なので問題はない。
「お前、承太郎たちとどういう関係なんだ」
そう尋ねれば、茉莉香と名乗った少女は困ったように眉をしかめた。
「…うーん、まあ、それは追々…」
言葉を濁す少女に今度はこちらが顔をしかめる番だった。それに呼応するかのように少女の後ろにいたシルバーチャリオッツが反応する。男がピクリと反応するのを、少女は宥めるように苦笑した。
「デーボさん、怖い顔になってますよ」
「これが地だ。悪かったな」
緊張感のない声に少しばかり呆れる。先程の反応を見る限り少女はスタンドが見えているはずだ。それは即ち現在自分の背中に剣先が向けられているということを知っているということ。なのにこの緊張感のなさはなんなのか。
ただの間抜けなのか、それともいざとなればどうにでも出来るという自信の表れなのか。…ただの子供に見える少女にそれほどの力があるようには見えない。しかし、少女のスタンドがどんなものか知らない以上、油断は禁物だ。
そんな考えに呼応するようにシルバーチャリオッツが剣先を向けなおす。それをちらっと見た少女は苦笑しながら歩を進めたのだった。
承太郎たちの部屋の前に着くと少女は扉を開いて、瞬時に閉めた。その行動に男共々目を丸くする。
「…どうした」
「…いや、あの。…デーボさん開けてよ」
「ああ?」
「お願いだからさあ!」
「せめて訳を言え訳を!」
「いいから!早く!」
男の背中をぐいぐいと押す少女を不思議に思う。先程まで足取り軽く…楽しそうな雰囲気すらあったのに今は顔面蒼白である。
こちらの事も気にせずに二人が押し問答していると扉が開いた。その先に立つ承太郎を確認して何故少女があんなにも開けるのを拒んだのかよく分かった。
…すげえ怖い顔してんなこいつ。
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