神隠しの少女 | ナノ
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人通りの多い所で変装されてたらどうしようかな、と思ったが杞憂に終わる。出たのは薄暗い路地裏で、目の前には見覚えのある蛍光イエローが何かを溶かしている真っ最中だった。

「お食事中ですかお兄さん」
「そ。茉莉香も一緒にどうよ?」

スタンドと同時に食事中だったらしいラバーソールがポテトを差し出してくる。それを一本貰いながら目の前で行われる食事に目を向けた。

「…男?」

微かに溶け残っている服や手などから推測してそう言えば頷かれる。

「なんか絡まれっちゃってさー。腹空かしてたし丁度いいかなって」
「ふーん」
「で、なんか用?」
「うん」

ちょっと私に雇われたまえよ。そう言えばラバーソールはキョトンとした顔をした。

「どーゆーこと?」
「デーボさんと君に家の警護頼みたいんだ。君のイエローテンパランスの防御って他人にも流用可能?」
「やったことはないけど出来んじゃねーの?オレと守備対象包めばいいんだろーし」
「間違って溶かしちゃう可能性は?」
「ないとは言えねえけど。よっぽどボーっとしてない限りは大丈夫だろ」

のんびりと言葉を交わしている間に僅かに残っていたカスも全て溶かしきる。もう男がここに居たなんて誰にも分からないだろう。

「うん、採用。頑張って働いてくれたまえ」
「え、おれまだなにも分かってないんだけど」
「あー…承太郎達にボコられるのと家でのんびり過ごすのどっちがいい?」
「おれが負けんの確定なの?」
「うん」

ゲーっという顔をするラバーソールに頷けば顔を手で覆った。

「えー…。おれのテンパランスちゃんが破られるとか信じらんなーい」
「でも勝てないだろうねえ」
「マジでー?」
「マジでー」
「根拠は何よ、根拠は」
「私が未来を知ってるからかなー」

冗談めかしてそう言えば、一瞬真顔になったラバーソールがこちらを見上げる。それに含みを持たせた笑みを返せば、あーあ、っと言いながら立ちあがった。

「そんなこと言われたらあたし困っちゃう」
「いつお兄さんからお姉さんに転向したの?」
「今」

けたけたと笑うラバーソールがこちらに向き直る。

「…満足させてくれんの?」
「もちのろんよ」

私のおじいちゃん不動産王だぜーと言えばけらけらと笑ってくれる。

「そりゃ期待できそうねん」
「…誘って言うのもなんだけど案外サクッと決めたねえ」

もう少し迷うかと思ったんだけどなあ。

「んー?まあ茉莉香がおれとおっさんに対してそこまで酷い条件出すとも思ってないし?それに茉莉香のとこに引き抜かれたんならDIO様も怒んないっしょ」
「そうかなあ」
「そうそう。あの人茉莉香には激甘じゃん?」
「あー、傍から見るとそうなのかもねえ」

甘い所は否定しないが、案外バイオレンスだったりもするんだけどね彼。今までに受けた仕打ちを思い出して遠い目をしつつ手を差し出す。迷うことなく乗せられた手を握って、承太郎達の所へと向かった。

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