神隠しの少女 | ナノ






「契約の細かい所は後で決めるとして。…茉莉香」
「はい?」
「お前デーボの野郎をスカウトしに来たって言ってたな。…なんでここにいると分かった?」

承太郎の言葉に微妙な沈黙が場を支配する。先程まで本当にいいのかとジョセフおじいちゃんに突っかかってたポルナレフ達もジッとこちらを見てくるものだから居た堪れない。
…とりあえずは誤魔化してみようか、な。

「…スタンドの能力の一つでね、知ってる人の所なら移動できるんだよ」
「ほお、じゃあなんでデーボを選んだ?」
「そりゃスタンド的に皆を納得させやすいと思って」
「DIOの野郎と鉢合わせするかも知れねえのにか?それともその状況でも引き抜けると思ってたのか?」

…鋭い事だ。確かにもしもデーボさんがまだDIOの側にいたとしたら、引き抜くことは難しい。この状況だからこそDIOがデーボさんを始末することはないといいきれる訳で、側に居る時ならば自分の手札を引き抜かれるのをただ見てはいなかっただろう。
さて、どう言い訳をしようか。未来を知ってる、なんて言う訳にはいかない。混乱させるだけだし、なにより理解してもらえないだろう。下手したらDIO側から情報が流れてる…スパイと思われてもおかしくはない。
全員の瞳が私を見つめる中一つ深呼吸をして、口を開く。

「…分かりました。私がデーボさんが承太郎達に向かってると思った理由お話しよううじゃありませんか」
「ああ、聞かせてもらおう」
「…ただしデーボさん、何を言っても怒らないでね?」

そう言えば、デーボさんは嫌そうな顔をした。先程のスタンドの一件を思い出しているのかもしれない。…まあ、当たらずも遠からずなのだが。

「…聞かねえと分からねえだろそんなん」
「なら言いませんー。運が良かったって事で」
「…」
「…」

部屋に居る全員がデーボさんの答えを待つ。彼は結局渋々ながらに頷いたのだった。…皆別にそんなに気にしなくてもいいじゃないですか。

「…えーっと、端的に言えばデーボさんがお馬鹿だからかねえ」
「ああ?」

どすの利いた声に思わず逃げる。典明君の背中に回り込んでそっと覗くと、それはもう睨んでらした。

「怒らない約束ですよー…」
「…さっさと続けろ」

舌打ちをしながらそう言われたので典明君のお膝を借りて話を続ける。

「さっき皆に言った通りデーボさんはDIOにお金で雇われてるでしょ?で、一行にはそれぞれ懸賞金が掛かってると」
「まあな」
「で、デーボさんのことだから、きっと狙いやすいのが居なくならない内にさっさと行動起こそうとするだろうなって。地味に守銭奴だし」

そう言えばジロリと睨まれる。…だって事実じゃん。

「同じ守銭奴でもダンの野郎とかいんだろうが」
「ダン君は守銭奴も守銭奴だけど基本的に自分の安全第一じゃん」

情報収集と体力等の消耗を狙って直ぐには出てこないでしょ、と言えば唸ってしまう。どうやらその考えはなかったらしい。

「ラバーソールとも迷ったんだけどね。あれもそういうタイプだし。でも能力的に誘いやすいのがデーボさんだったってわけです」
「つまりオレの行動パターンから読んだと」
「まあ、そういうことだねー」

へらりと笑えば納得がいったと頷くデーボさん。そしてふと顔を上げて。

「良い読みだな。ラバーソールの奴もこっち来てるぜ」
「…さらっと情報流出したねお兄さん!」
「別にもうお前に雇われたんだから問題ねーだろ」

…いや、そうと言えばそうなんだけど。その言葉を皮切りにジョセフおじいちゃんやら典明君やら色々な所から誰だ、とか、どんな能力なんだとか聞こえてくる。…うん、面倒くさい。

「じゃあラバーソールも引き抜こう」

財団に説明お願いねとジョセフおじいちゃんに告げて、呆気に取られてる皆を取り残し、一人ラバーソールの所へと移動した。

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