神隠しの少女 | ナノ






そして辿りついた一室には全員が集合していた。承太郎を除く三人は驚いたような顔をしている。承太郎?彼なら視線で熊くらいなら殺せそうな勢いで睨んでますよ?一週間ぶりに顔を合わせたんだからもう少し嬉しそうにしてくれてもいいじゃん…!

「茉莉香」
「はいっ!」

低い承太郎の声に背筋が伸びる。怖いよお兄さん…!

「なんでてめえがここに居るんだ」
「…えーっと、偶然?」
「ああ?」

現役の不良のメンチを真正面から受け止められるほど図太くないので視線が泳ぐ。それを見た承太郎の眉間のしわが深まった。嘘はついて…るけど!どっちかっていうと怖くて目を逸らしてるって気付いて!

「承太郎。そんなに睨んだら茉莉香も話し辛いだろう」
「そうだよ、今の君熊くらいなら目で殺せそうだよ?」

助け船を出してくれたアヴドゥルさんと典明君に御礼が言いたい。っていうか典明君ったら同じ事考えてたんだね、結婚しよう!なんて沸いた考えが浮かぶくらいにはテンパっている。
舌打ちをしながら帽子を深く被る承太郎に悲しくなる。もっとこう…感動まではいかないけど心温まる再会がしたかった、な!

「で、本当に何故ここに居るんじゃ?そして隣の男は?」
「彼が呪いのデーボですジョースターさん」

アヴドゥルさんの言葉に周りに緊張が走る。当の本人はもうやる気がないのかぼうっとしてるけどな!

「…えーっと、長くなるんでとりあえず皆座りません?」

っていうかさっきからくらくらし始めてるんだよね。そろそろ貧血が起こりそうだよ、座らせてくれ。そんな願いが通じたのかどうか分からないが皆好き勝手に座り始める。
二つ並んだベッドの内一つに承太郎と典明君が座り、椅子にジョセフおじいちゃんとアヴドゥルさんが座る。ポルナレフはどうやら座る気がないらしく険しい目でこちらを見ていた。…やりづれえ。
とりあえず残っていたベッドにデーボさんと並んで座る。このまま倒れ込んだら怒られるよなやっぱり。
さて、ポルナレフ以外全員が腰を下ろした。やる気のないデーボさんを除き皆どこかピリピリしてる。…わー帰りたい。

「で、まずおれとしてはその子の説明が聞きてえんだが」

未だにシルバー・チャリオッツを出しっぱなしのポルナレフがこちらを睨んでくる。んー、これは自分で言うべきなんだろうか。というか君も自己紹介とかしてないよね、と思いつつ口を開く。

「えっと、空条茉莉香です。どうも」
「わしの孫で承太郎の妹じゃ」

何故か胸を張るジョセフおじいちゃん。可愛いなあ。と思いつつ一応注釈は入れておく。

「まあジョースターの血は流れてませんが」

その言葉におじいちゃんがちょっとショックを受けていた。いや、血のつながりを否定したとかじゃなくてね?一応言っとくべきかなって!だって星型の痣とか無いし!容姿も承太郎と違ってほぼ日本人だし!

「…どういうことだ?」
「両親祖父母共に亡くしまして。従兄妹である承太郎の家に引き取られたんです」

そう言えばポルナレフが気まずそうな顔になって小さく謝罪の言葉を口にした。子どもにこんな事を言わせるなんて、とか思ってるのかもしれない。まあ、本人あんまり気にしてませんが。苦笑するしか出来ない。ついでに名前やら名乗ってたが知っているし割愛しとく。

「で、何でここに居んだ」

承太郎がじろりと睨みながら問いかけてくる。だから睨まないでってば。

「…えーっと、デーボさんをスカウトしに」
「あ?どういうことだ」

私の言葉にデーボさんが私の顎を持って顔を持ち上げる。首が辛いですこの体勢。

「…いや、色々あってさぁ。家の警備やってもらおうかと思って」

私の言葉に色々な所から驚きの声が上がる。…まあ、そうなりますよねー。

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