神隠しの少女 | ナノ






そして目の前には冷蔵庫。辺りを見回すと簡素なホテルだと言う事が分かる。
…えーと、私はデーボさんに会いたいと思ってやってきた。で、冷蔵庫と上に並べられたジュース類が出迎えてくれた訳で。つまり、彼はもうこの中に居ると言う事だ。
…冷蔵庫の中に入らなくて良かった。骨折じゃ済まないよねこの容量じゃ。っていうかデーボさんよく入ったよなあ。
にしてももう入ってるってことは直ぐポルナレフが来ちゃったりするのだろうか。面識もないしそれは困る。と、いうことでさっさと事を済まそう。

コンコン、と冷蔵庫の扉をノックする。ついでにデーボさーん、と呼びかけるが反応は無い。…冷蔵庫って防音なんだろうか。開けていきなり攻撃されたら嫌だなあ。
ホテルの人には悪いけど今はこれ以上怪我したくないし。実はさっきから貧血ぎみだったりする。怪我したら倒れかねん。と、少し逡巡した後二、三歩下がってから扉を消す。
その中から僅かに目を見開いたデーボさんが姿を現した。…うん、いきなり扉が消えるなんて思わないよねー。なんて思いつつ。

「や、元気?」
「…それなりにな」

すっぽりと嵌まっていた冷蔵庫からのそのそと出てきたデーボさんの手を引っ張る。立ちあがった彼の立派な胸板に飛び込んだ。

「ふっふー!久々ですね!」
「おー。…で、なに邪魔してくれてんだお前は」

ガシッと頭を掴んだ手に力が籠る。ウザいと突き離さなかったので嬉々として抱きついたが罠だったなんて…!少々悲しくなりつつ痛む頭に悶絶する。

「ス、ストップ!ストップ!」

ヘルプミー!なんて叫ぶ私に容赦なく更に力を込めるデーボさん。
…の、脳味噌が、今でさえ哀れな脳味噌が更に哀れに…!ジタバタと暴れるデーボさんが呆れたように手を離してくれた。

「で、本当になんでお前ここに居んだよ」
「まあ、色々ありまして」

とりあえず移動しましょうよ、と言おうとした瞬間。扉からガチャリと鍵の開く音がした。思わず飛び上がった私と、敵意を丸出しにするデーボさん。慌てて飛びかからないように手を掴みながら、逃げるべきか悩んだ。まあ、そんな事をしている内に扉が開いちゃうんですけどねー。

「…」
「…」
「…」
「だ、誰だテメーら!」

ほんの僅かの間の後ポルナレフが叫びながらシルバー・チャリオッツを発現させる。美しい銀色に惚れぼれとしつつ、こ、こんにちは、と間抜けな言葉を口にした。
ふむ、どうしようかねこの状況。

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