歯ぎしりをしたお姉さんがこちらを睨みつける。ゾッとするような目だ。しかし、負けじと睨み返す。
「でも、それじゃあなたも私を傷付けられないわ」
「ええ。ですがこのまま向かい合っているというのもいいものですよ」
お姉さん美人ですし、と微笑めば嫌そうな顔をされる。地味に傷付くなあ。
「どうするつもりなのかしら」
「…私の監視役だったお兄さんが撃たれたのはお腹でしたね」
「…ええ。もう死んでしまったと思うけれど」
「そうですか。…ですが少しの間なら生きていたという事です。きっと武装した財団の人がこちらに来るでしょうね」
「…あなたが的になるとでも?」
「被害は受けないみたいですから」
「私がスタンドを解除するとは思わないのかしら」
「出来るならもう既にしているでしょう?」
無言のまま見つめ合う。ふ、とお姉さんが笑った。
「ああ、なんで私ってこうも駄目なのかしら。後少しだったのに後少しでDIO様のお役に立てたのに。なんでなんでなんで…」
がりがりと両手で頭を掻きむしるお姉さん。え?壊れた?そんなことを思っている間にお姉さんがポケットから何かを取り出す。…ナイフだ。そしてそれを自分の腹部へと突き刺した。
「っ…!」
内臓が焼けつくような感覚。ナイフが埋まっているのは確かにお姉さんの身体だ。なのに血を流しているのは私。彼女の怪我が私へと移ったのだ。
後ろで息を呑む音がする。出てこようとするお母さんを手で制して。
「…や、っぱり」
思わず笑いたくなった。ああ、やっぱり。
「自分、自身への悪、意は相手に、返るんですね…」
私達以外に攻撃する人間はいない。そして相手への悪意ある攻撃は出来ない。となれば、出来るのは自分自身へのものだけ。
しかし、自分に対するものでも適応されるかが不安だった。これで駄目だったら怪我のし損じゃん?
「では、私、も」
喋るたびに口から血がこぼれる。ああ、鉄臭い。そんなことをぼんやりと考えながら、私は指輪の嵌められていた指を切り落とした。
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