神隠しの少女 | ナノ






ガラリと襖をあけるとホリィママがこちらに顔を向けた。この騒ぎで意識を取り戻したのか。

「茉莉香ちゃん、どうし…そ、の傷!」

私の怪我を見て目を見開くホリィママに近付く。側にあったカーディガンを羽織らせて、庭へと降りた。いきなり竹薮の中に来たホリィママが目を丸くする。しかし、今は説明している暇はない。
出来ればもっと遠く、危険のない所まで連れてきたかった。…しかし協力者が消されてしまった以上、ホリィママがDIOが死ぬ以外で助かるチャンスはきっとここだけだ。

「ごめんね、ホリィママ」

訳が分からないと周りを見渡していたホリィママが、私の言葉にジッと見つめてくる。そして、そっと微笑んで私の頬に触れた。

「謝らないの」

その言葉に涙が滲みそうになるのをぐっと堪える。砂利を踏む音が近づいてきた。私の指にあるスタンドのせいか足音は迷うことなくこちらへ向かってくる。

「ホリィママ、今こっちに来ている人は、ホリィママの命を狙ってる」

息を呑んだホリィママの肩に手を置く。落ち着かせるようにジッと目を合わせた。

「私が、絶対に守るから。…信じてくれる?」
「もちろんよ、娘を信頼しない母親がいる訳ないでしょう?」
「…ありがとう、お母さん」

ぱちりと瞬きしたホリィママ…お母さんがにこりと笑う。それに何とか微笑み返す。きっと今にも泣き出しそうな不細工な笑みだ。
一人竹薮から出る。目の前まで来ていたお姉さんが足をとめた。

「…鬼ごっこはもうおしまいよ」
「そうですね。…あなたの負けだ」
「随分と強気ね」
「ええ。だってあなたは私を傷付けられない」

お姉さんの目が鋭く光る。それが私の想像が真実だと教えてくれた。
お姉さんのスタンド、パーフェクト・サークルは一見完璧である。彼女への攻撃は私に向かうし、私からも傷付けられない。しかし、私への悪意はどうなる?誰かが私に矛先を向けたら?きっと、それは彼女に返る。そう、だから彼女は私をお医者さんの弾丸から守ったのだ。彼は私も殺そうとしていたから。

「あなたの能力は私とあなたへの攻撃を入れ替える事」

つまり、ただ私を身代わりにするのではなく、自分と私への被害が交換されるだけなのだ。…彼女が承太郎達の討伐に駆り出されなくて本当に良かった。彼らは身代わりとなった仲間に思い切った攻撃できるとは思えない。いや、いざとなったら出来るだろうがそれに気付くまでどんな被害が出た事か。

「…ここにはあなたに悪意を持って攻撃する人間はいない。私に対しても同じです」

さあ、どうしますか?

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