とりあえず、分かった事はこのお姉さんは協力者と何らかの関係があった。信者同士連携が取られてたのかもしれない。で、協力者からホリィママを救うための計画を聞いて、ホリィママがDIOを誑かしてると思っている…と言ったところか。以前の女性といいDIOに関わると冷静さとか取っ払われるかだろうか。
「…その彼は、どうしたんですか」
「あなたのお母さんがどうやってDIO様に取り入ってそんな事をさせたのかは分からないけど、ジョースターの人間を助けるなんてDIO様の本心である筈がないでしょう?それも分からない様な無能が居たらDIO様に悪いもの。だから」
始末したわ、と微笑む。お綺麗な顔して過激ですね。
「…もう一度言います、母は彼とは関係ない」
「まだそんな嘘をつくの?」
健気な子は好きだけれど嘘をつくのは感心しないわ、と銃口が額につけられる。
「本当の事ですよ」
向けられていた銃が跡形もなく消え、私の手の中に収まる。驚くお姉さんに向けて引き金を引こうとした。しかし。
「なん、で?」
「あなたは私を傷付けられないわ」
目を細めてお姉さんが笑う。ピクリとも動かない手から銃が奪われ、お姉さんの元へと戻った。その隙にスピリッツ・アウェイでお姉さんに触れて、腕と身体を切り離そうとするが、それもまた寸前で止まった。スピリッツ・アウェイを見たお姉さんが口を開く。
「あなたもスタンド使いだったのね」
も、という事はやはりこれはこの人の能力なのだ。
「私に、何をしたんですか」
「…それ」
指差された私の手元。目を見れば指に何かが嵌まっている。…なにこれ。
「それが私のスタンド。―パーフェクトサイクル」
これが、スタンド?どこからどう見てもただの指輪にしか見えない。
「その指輪を見に付けた人は、私に向けられた悪意を全て受け取ってくれる…」
「悪意…」
…つまり、先程お兄さんが撃った弾丸には"お姉さんを傷付ける"という悪意があった。だからそれは私に向かって飛んできたわけだ。そして私のお姉さんに対する行動も止められた、ということか?
…サイクルというにはあまりにも一方通行だ。だってお姉さんに対しての悪意が私に来るのならお姉さんは誰も傷付けられないじゃないか。偶然の事故に頼るしかないとかなにそれ。
「…さ、お母さんの所に行きましょうか」
「行かせると、思いますか?」
「…どうやって止めるのかしら」
ジッと睨みあって数秒。その間にお姉さんの上から鈍器を落とそうと試みるもやはり駄目だった。…このスタンドの有効範囲はどれだけだ?ホリィママを連れて数キロ先まで逃れれば何とかなるかもしれない。しかし、ここで逃がしたら今後ホリィママの側を離れられなくなる。そうなれば花京院くん達は救えない。
「茉莉香くん、なにが…」
タイミング悪くお医者さんが顔を出す。倒れたお兄さんに驚いた顔をして駆け寄った。それを撃とうとしたお姉さんの前に飛び出せば、顔を顰める。
「…退きなさい」
「嫌です。退かしたいなら撃てばいいでしょう?」
私のスタンドなら不意打ちでない限り弾丸程度なら消せる。とにかく今は彼らの、ホリィママの安全が最優先だ。
「退きなさい!」
苛立たしげに叫びながらもお姉さんが撃つ気配はない。何故だ?代わりならそこに居るお医者さんでもだれでも使えばいい。なのに何故私を撃たない?そうこうしている間にお医者さんがお兄さんから銃を奪いこちらに向ける。
「き、君も彼女の仲間か!」
なぜそうなるか頭が痛む。どう見ても彼らを庇ってるだろう私。ああ、撃たれないからそう思ってるのか?そんな事を考えている内にお医者さんが引き金を引こうとして。スタンドで受け止めようとしたが、それより先にお姉さんに腕を引かれて弾丸は耳元を掠めて飛んで行った。
…一つの仮説が私の頭に浮かぶ。これで合っているのか確証はない。だが、可能性があるならばやってみるべきだ。…誰を犠牲にしようとも。
「さあ、退きなさい!」
「分かりました」
「え?」
拍子抜けしたような顔をするお姉さんに背を向けホリィママの部屋へと走る。後ろで一つ発砲音。残された彼らがどうなったのか、分からないが振り向かない。
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