神隠しの少女 | ナノ






私の言葉に少しばかり吹き出しながらもお礼を言うテレンスさん。ああくそ、イケメン過ぎてニヤニヤが止まらんよ!


「で、ヴァニラのそっくりさんが出たんですか?」

「あ、ああ、そうなんですよ!」


ビッと指をさせば、クリームが浮かんだ。


「な、なんとスタンドまでそっくりさんとは…!」

「そんな訳が有るか!」


ピクピクと血管を蠢かしながら怒鳴るヴァニラは阿修羅の様です。っていうかさ。


「いやいや、怒鳴らなくても分かってますし」

「ならどう言う了見か聞かせて貰おうか」

「いや、うん…認めねえよ!?」

「何がだ!?」


ヴァニラにとっては意味の分からないであろうことを叫ぶ。テレンスさんは何か勘づいたのか何も言わずに肩を震わせていた。…いやいやいや、これがヴァニラだってことは分かってますよ?だってこんなムキムキ野郎がそうそう居る訳な…いや、身近に結構いるけども。まあ、顔とか声とか言う事とかからヴァニラだって言うのは認めよう。でもさ、でもさ!
混乱する頭を抱えながらチラリとヴァニラを見る。かち合った視線に少し警戒するヴァニラにため息を一つ吐いた。…服装とか変えただけでこんなイケメンになるとか納得いかなくね?いや、テレンスさんはいいよ。テレンスさんだし、元々イケメンだとは思ってたし。しかし、ヴァニラの場合は服やらアクセサリーのインパクトが強すぎて格好いいと思ったことがなかった。冷静になれば確かに整った顔をしていたとは思うけども。


「…なんかムカつくな」

「だから何がだ!」


ポツリと零れた言葉にテレンスさんは堪え切れないように吹き出し、ヴァニラは益々混乱していた。ヴァニラのくせにイケメンとか、本当どうかと思うよ私は!

ぎゃあぎゃあと喚くヴァニラをテレンスさんがなんとか収め買い出しに向かう。相変わらず強い日差しに暗さに慣れていた脳味噌がクラリとした。


「今日も晴れてますねー」

「そうですね。ちゃんと日焼け止め塗ってきましたか?」

「もちろんです!」

「ほう、馬鹿なお前でもそれくらいは出来るんだな」

「なんか言ったかい筋肉お化け」

「き、筋肉お化けだと…!」


バチバチと睨みあう私達を尻目に、さっさと進んでしまったテレンスさんを見失いかけてちょっと焦った。


「全く、いい年して何をしてるんですかあなたは」

「…そいつが」

「言い訳は結構。…茉莉香もあまりヴァニラを弄って遊ばないでください」

「はーい」

「貴様わざとだったのか…!」


ジロリと睨んでくるヴァニラを置いてテレンスさんと手を繋いで歩きだす。幼い子供みたいで気恥ずかしさはあるが、ちょっと嬉しかったのも事実である。


「あ、美味しそう」

「ああ、帰りに買ってあげましょうね」


道端に出ていた屋台に気を取られた私にテレンスさんが微笑みかけてくれる。…これでは本当に子供みたいだな、なんて思って顔に血が上った。

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