神隠しの少女 | ナノ






しくしくと胃が痛む。ああ、ここ最近しっかりと自覚したけど私ってストレスが胃に来るタイプなんですね!このまま行ったら胃に穴が開きそうで怖いわあ。
一人寂しく乾いた笑いを発しながら持ちこんでいた靴を履く。部屋の中で土足ってなんか罪悪感が有るよね。イタリアとかエジプトに行くとあんまり気になんないんだけどなあ。

さて、現状確認。今は朝の8時、香港は9時の筈。監視のお兄さんには申し訳ないが睡眠薬を飲んでもらった。多分昼過ぎまでは起きないだろう。
皆は多分そろそろ船に乗り込んだ頃、かな?細かい時間は分からないので不安たっぷりである。
もう終わってるってことはないと思うけど。気を付ける事は、承太郎達に私の存在がバレない事。勝手に行動したことがバレて監視が強まるのは困る。
とりあえずは家出少女が居るであろう船倉に隠れるのがいいかな。彼女は驚かせてしまうが、そこはまあ…仕方ないという事で。

で、さっさと終わらせて、どうにか協力者を探し出す、と。気は進まないがこっそりDIOの館に行くしかないか…?テレンスさんから写真か何か貰えればそれで事は済むわけだし。
まあ、いざとなればデーボさんの事は接触する前に捕まえればいいよね、うん。なんだかもう考えるのが面倒くさくなってきたというのが本音だったりもする。
自分の脳味噌の粗末さに悲しくなりながら家出少女の顔を思い浮かべる。…あれ、もしかしなくてももうあの子が承太郎達と会ってたらアウトじゃない?血の気が引いたのと景色が変わったのは同時だった。


恐る恐る目を開くと、驚愕に目を見開いた少女と薄暗い中に積まれた荷物達。どうやらまだ家出少女は承太郎達の所に連れて行かれる前だったようだ。
ホッと息を吐いてから、固まっている少女に微笑んでみる。驚かせた詫びをしようと口を開こうとしたその時。

「お、お化けー!!!」

甲高い悲鳴と共に少女はズザザザザッと勢いよく後ずさった。その悲鳴にこちらの心臓く痛くなったが、どたばたと言う足音が耳に入ったので急いで荷物の影に隠れる。
荒々しくドアの開かれた音と男性の驚きの混じった怒声、少女の騒ぐ声が入り混じった後、船倉は元通りの静けさを取り戻した。見つからずに済んだことに肩の力を抜きつつ、幽霊と間違われたことにちょっぴり悲しくなる。ちゃんと足付いてるんだけどなあ…。
まあ、いきなり目の前に人が出てきたら驚くよね、と自分を慰めつつ立ちあがる。

…えーっと、あの子が海に飛び込んで承太郎が助けて、で偽船長登場、だよね。スピリッツ・アウェイを発現させて眺める。彼女は相変わらず微笑みながらふよふよと浮いていた。

こうなると分かってから日々彼女を理解しようと頑張ってきた。結果、分かった事が幾つかある。
今の所物を消せる範囲は10m、しかしそれが生命体となると私かスタンド、どちらかに触れていることが条件となる。また、私自身が触れていない場合、次の動作まで多少タイムラグが存在した。
出せる範囲は私が一緒ならほぼ制限なし、居なければ視界の届く範囲内となっている、などなど。
つまり、偽船長と承太郎達を戦わせない為には彼から10mまで近付いて、しかも承太郎に気付かれてはいけないということだ。…スター・プラチナから隠れられるのか甚だ不安だかやるしかない。

気合いを入れてこっそりと船倉から出る。甲板へと続くドアまではどうにか誰にも見つからずにすんだ。
ドアに着いてる窓からこっそりと外を覗いてみる。都合良く皆が鼻に触れている所だった。…承太郎のひっかけ近くで見たかったなあ。
そんなことを考えながら踵を返す。少女が立っていたであろう場所の真下辺りまで急いで駆けて、スピリッツ・アウェイを船の外に発現する。ダン君に感覚同調させるコツ聞いといて良かったよ。

そうこうしてる間に甲板から承太郎に殴られた偽船長が落ちてきた。その腕をがっしりと掴む。こちらを見た船長の顔が驚きに歪む。しかしそれも一瞬で消えうせて、ほんの少しの間をおいて私もそれに続くように船から姿を消した。

…その姿を乗組員に見られていて、船に幽霊がいたと言っていたと知るのは彼らと合流してからだった。

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