神隠しの少女 | ナノ






スピードワゴンは彼を生まれながらの悪だと言った。私もさっきまでそうだと思っていた。そうでなくてはあんな冷酷なことが出来るものかと。
…でも、似ていたのだ。先程の彼の微笑みが、高校生の頃両親を亡くした私の笑みと。
平気だよ、大丈夫だよ、と。本当は悲しくて、寂しくて。泣き喚いてしまいたかった。でも、それを許して抱きしめて慰めてくれる人は居なかったから。だから、大丈夫なのだと自分を騙し続けた。微笑んで、一人で生きていけるのだと吐き続けた。
本当は、ただ自分を投影してしまっただけなのかもしれない。だけど、確かにあの時の私と彼がダブったのだ。

漸く咳が収まった頃になっても彼は微動だせずに私を見つめていた。赤い目からはなんの感情も見出せなかったけれど。身を起して滲んだ涙を拭った所でやっと口を開いた。

「…何故、逃げなかった。お前のスタンドならば逃げるのは容易いだろう」
「なんで、だろうね」

殺される、と思ったのも事実だ。息が出来ない苦しさは今思い出しても身震いする。

「おかしな、奴だ」
「自分でもそう思うよ…」

あ、敬語じゃなくなっちゃけどもういいか。まだ脳に酸素が足りてないからなのかもしれないけれど、漠然とそう思った。
DIOに向かって苦笑する。それを見て彼の肩が揺れる。どこか迷う様に私に触れようとする。私はもうそれを避けることなく甘受した。

「…本当に変な奴だ」
「…おかしな奴って言われるのはいいけど、変な奴って言われるのはなんか嫌な感じだなぁ」

私の言葉を聞いて、DIOは声を上げて笑い出した。…そんなに変なこと言ったかな。
暫く笑った後のDIOは先程までのどこか弱弱しさは見えなかった。

「そろそろ帰った方がいいんじゃあないか」

その言葉に時計を見ると、思っているよりも進んだ時間を示していた。
急いでベッドから降りる。スタンドを出して自室を思い浮かべる…前にDIOを振り返る。

「また来てもいい?」

その言葉にDIOがキョトンとする。…なんだ、この吸血鬼思ってた以上に人間臭いじゃないか。自分の口角が上がるのが分かる。それを見てジロリと目を細められた。

「好きにするといい。…来るなと言っても来そうだからなお前は」

その言い様に更に笑みが深まる。

「じゃあ、また明日」
「明日も来る気か…」

呆れたように呟くDIOに手を振って、私はそこから消え去った。





…こんなシリアスになる予定なかったのに…!DIO様のキャラ崩壊酷くてすみません←

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