神隠しの少女 | ナノ






「DIOさんDIOさん」
「なんだ」
「シェイクスピアの喜劇で○○の陽気な女房たちの○○に入るのってなんだっけ」
「…ウィンザーの陽気な女房たちのことか?」
「あー、そうそうそれだ!ウィンザーだ!」
「…何をしているんだ」
「クロスワードパズル」

ウィンザーと書き込み、雑誌を持ち上げる。DIOはそれを一瞥した後形のいい眉を寄せた。

「今ここでやる必要があるのか」
「必要はないけど…特にやることもないですし?」

カードか何かで遊んでもいいが…DIOって涙を誘う程引きが悪いんだよね。イカサマとかしなくても余裕で身包み剥げると思います。というか何度か剥がさせていただきました。いい笑いの種になったよねあれは!思い出し笑いをするのを堪えつつまたパズルに向かう。…流石にベッドの上じゃ書き辛いなあ、やっぱり机に行くか。そう思って立ちあがろうとするが、それは叶わなかった。

「ねえ」
「なんだ」
「手離して」

DIOの手が私の足をがっしりと掴んでいる。パタパタと上下させてみるが離れない。それどころかDIOの方へと引き摺られてしまった。枕が遠のき、シーツに皴が刻まれる。…シーツに皴が刻まれるってなんかえっちぃね!って、そんなことはどうでもいい。

「離してよー」
「嫌だ」
「えー…」

枕元に置き去りにされた雑誌の方に這いずる。後もう少しと言う所でまたズルズルと引っ張られた。…こいつ楽しんでやがる。

「もうなんなのさー」
「さて、なんだろうなあ」
「…あれか、かまって欲しいとか?」

…あれ?即座に否定の言葉が返ってくるかと思ったが、DIOは何も言わない。足元を振り返ってみると拗ねた顔の帝王が居られました。

「もしかして、図星?」
「うるさい黙れ」

足から手を離しそっぽを向くDIO。え、なにこれ可愛い。思わずにやにやと笑ってしまう。ちらりとこちらを見たDIOの眉間に益々皺が寄った。

「かまって欲しいなら最初からそう言えばいいのに」
「黙れ。誰がそんな事を言った」
「あれ、違うの?」
「…」

だんまりを決め込むDIOにますます頬が緩む。あれか、デレ期か、デレ期なのか!口元を手で隠しつつ丸まりながら悶絶する事数秒。ベッドの上に立ちあがり、ボスボスとDIOの元に歩く。ベッドの柔らかさに足が取られて歩きにくい事この上ない。

「どりゃ」

胡坐をかいていたDIOに圧し掛かるように身体を預ける。DIOの形のいい頭がぽすりとお腹に抱きこめられた。…猫背気味に座っているDIOに立った私が抱きついてお腹の所にちょうど頭が来るってよく考えたらすごいよね。

「…なんのつもりだ」
「いや、DIOが寂しがってるみたいだから!」

からかう様に笑っても何も言い返してこない。…本当に今日はどうしたんだろうか。何か嫌なことが有ったのか?思わず心配になってしまう。

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