神隠しの少女 | ナノ






「…それで、ジョセフおじいちゃん達はどうするの?」
「ん?ああ、茉莉香には悪いが今日にでもDIOの居るカイロに向かう飛行機のチケットを取ろう」
「ジョースターさん、私も同行します」
「同行するだと?なぜ?おまえが?」
「そこんところだが…なぜ…同行したくなったのかはわたしにもよく分からないんだがね…」
「…ケッ」
「……おまえのおかげで目がさめた、ただそれだけさ」

典明君と承太郎がなんだかいい感じに仲良くなりそうだが、それを見ているわけにはいかない。

「あの、それは止めた方がいいんじゃないかと」
「なんでだ?流石にこれはお前の我儘は聞いてやれねーぜ」
「いや、我儘っていうか…。…のり、花京院君」
「今まで通りでいいよ茉莉香」
「あー、うん。ありがとう典明君。…で、典明君はDIOの所にどれくらいスタンド使いが居るかしってる?」
「…いや。他にも多く居ると聞いただけで詳しい数までは知らないな」
「そっか。DIOの元には私が知ってるだけで20人近いスタンド使いが居るんだよ」
「20人だと!そんなにおったのか!」
「うん、それにスタンド使いじゃない協力者も多く居るんだ」

私の言葉にジョセフおじいちゃんが深刻そうな顔になる。単純計算で5倍近い敵が居ると知ればそうもなるだろう。

「で、更にDIOは皆のことを知ってるけど、皆は相手の顔も能力も知らない。…典明君がここに居るのはDIOの指示で来たからだよね?」
「ああ」
「典明君の件と同じようにDIOが敵を送り込んでくるのは明白だよ。もしかしたら飛行機内で襲われるか…最悪飛行機自体墜落させられてもおかしくない。そうなったらそれこそ他の乗客全員巻き込んで死にかねない」
「確かにそうじゃな…」
「まあ、もしもカイロに辿りつけたとして…20人近いスタンド使いが一手に襲いかかってきたら?あっちは皆のスタンドを知ってて、こっちは何も知らないのに対処しきれると思う?」
「厳しい、だろうね」
「なら、どうするってんだ」
「…アヴドゥルさん。あなたの見立てではホリィママのタイムリミットは…?」
「50日程度だろう。…二カ月はもつまい」
「そうですか。…それなら、悠長にしている時間はないけど、出来る限り陸路と海路で向かうべきだと思う。特に陸路が理想的かな」
「なんでだよ」
「陸路なら移動手段を失ってもまた手に入れるのは容易いよ。でも、海路じゃ…海のど真ん中で船が動かなくなったりしたらかなり厳しいんじゃない?」
「なるほど、確かに理にかなってますね」
「それに、敵のスタンド使いを相手するにも丁度いいと思うよ」
「どういうことじゃ?」
「DIOの元に居るスタンド使いは大きく分けると3タイプになるんだよね…。まずDIOに心酔しているタイプ、次にお金で雇われているタイプ、そして典明君みたいに…」
「肉の芽を埋めつけられているってことだね?」

典明君の発言に頷き返す。皆理解が早くて助かるなあ。

「一番多いのはお金で雇われてる人達だと思う。…多分DIOは皆に懸賞金を掛けてるんじゃないかな」
「と、なると取り分が減らないように一人、ないしは少人数で襲ってくると言う訳じゃな」
「…だが、DIOがバラバラに襲わせるとは限らねーじゃねえか?俺らを殺るなら団体で襲わせる方が確率は上がるだろ」
「あー、そこは…私の勘と言うか付き合って分かってると言うか…」

上手く言葉で表せられるか分からないが…。

「DIOはジョセフおじいちゃんのおじいちゃん…ジョナサン・ジョースターを敵としながらも尊敬してる、んだよね」
「尊敬じゃと?」
「うん。だからこそ、ジョースター家の人間、ジョセフおじいちゃんと承太郎にスタンドが発現したのに気付いて典明君を送り込んだんだと思う。…スタンドを得ることで気付いた百年以上続く因縁にけりをつける為に」
「意識してくれてるってわけか。…なら余計確実に狙ってくると思うぜ?」
「そこなんだけど…彼プライドが高いって言うか。ジョースターを脅威だと思ってる反面自分を追い詰められたのは、ジョナサンだから、って思ってるんだよね」
「ジョナサン以外ならジョースター家でも問題ない、と思っておる…もしくは思いたい、ということか」
「そう。その矛盾してる考えが有る限り、DIOが全員に襲わせるってことはないと思う。ジョースターとの因縁を考えると手を打つべき、だけど多勢に無勢みたいな明らかに脅威と思っていることはしたくない…みたいな」
「それなら確かに敵がバラバラに襲うことに口出しはしないだろうね」
「うん。そうなれば、移動距離が長くなるほどバラバラになるし、合間合間に休息がとれるんじゃないかな」
「確かに、その方が効率的だな。…どうしますかジョースターさん」
「ふむ、茉莉香の言っている事は筋が通っておる。SPW財団の人間が来たらすぐにでも出る船が有るか聞いてみよう」

ジョセフおじいちゃんが頷いた時、丁度来客を告げるチャイムの音が鳴り響いた。

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