「私がDIOに会ったのは空条家に来る一年ほど前だから…、もう彼との付き合いは四年近くになるね。私はその頃、スタンドを手に入れた」
ふわりと私の後ろに浮かび上がったスピリッツ・アウェイに四人とも警戒する。それに苦笑を零れたが、話を続けることにした。
「私のスタンドの能力は…分かりやすく言うと瞬間移動みたいなものでね?初めて移動したのが、DIOの館だった。で、まあ仲良くなった、んだよね」
「仲良くなった?DIOと?」
顔を顰めるジョセフおじいちゃんに小さく頷く。…彼らの中のDIOは残虐で冷酷なのだろう。それが全く合っていないとは言わないが、私の知っているDIOとは、大きく異なる。
「…三年前、ジョセフおじいちゃんと貞夫パパが私を迎えに来てくれた時の事、覚えてる?」
「…もちろんじゃ」
「そっか。あの時、ジョセフおじいちゃんは私に環境を変わるのは戸惑っても仕方ないって言ってたよね。変わるのを恐れて中々行きたがらないと思ってた、そうだよね」
「ああ」
「うん。でも、違うんだ。私が来るのを躊躇ったのは、ここが空条家で、ジョースター家の血が流れていたから、なんだよ」
私の言葉に四人が息を呑む。きっと、気付いたんだろう。
「そう、私はジョースター家とDIOの因縁を、知ってたんだ」
ジョセフおじいちゃんのが、なんだと、と呟いた。…そう、なるよね。
「百年以上前、ジョセフおじいちゃんのおじいちゃん、ジョナサンという人と戦って、首だけになったDIOが彼の身体を奪って生き延びた、そうでしょう」
「…ああ」
「私は、それを知っていたから怖かった。もしも、万が一DIOとジョースター家の争いがまた起きたら。その時私はどうすればいいのか分からなくなりそうで」
「それでも、お前はおれ達を選んだ!そうだろうが!」
承太郎が叫ぶ。辛そうな顔をする承太郎に心が痛む。ああ、ごめん。ごめん、ごめんね承太郎。
「ううん、承太郎…私は、選べなかったんだ」
ガッと承太郎が私の襟首を掴む。グリーンの綺麗な瞳が揺れて、揺れて。
「選べなかった、だと…」
「うん。私は選べなかったんだよ。かけがえのない友人も、家族も。どちらも、欲しかったんだ」
承太郎の顔が歪む。こんな顔をした承太郎を見るのは、初めてだ。
「だから、私はずっと祈ってた。承太郎達とDIOが戦わないことを。どちらかが失われるかもしれない様な争いが起きないことを。ずっと、祈ってたんだ」
そう、空条家に行くと決めたあの日からホリィママが倒れたあの時まで。有り得もしない希望に縋る私の姿は傍から見たら滑稽だったかもしれない。愚かだったかもしれない。それでも。それでも。
「ずっと、祈ってたんだ…!」
それは叶わない祈りだったけれど。
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