神隠しの少女 | ナノ






深夜私は一人膝を抱いていた。明日、全てが動き出すのだ。やはり少々心細くもなる。

大体私の立てた計画の土台となる部分は基本的に運任せ、人任せだったりする。これが単純に承太郎側かDIO側についていたらこうはならなかった。だって、スタンドやら知識やらを使って障害を消してくだけだし。しかし、DIO達も承太郎達も救う、となれば軋轢が生まれるのは必至な訳で。それらをある程度解消するのは私だけでどうにか出来るものでもない。
しかし、協力を得られるかは本当に未知数だ。知識としてどう物語が進んで行くかは、分かる。だが、ここは現実の世界だ。紙面に映らない所は私とて知り得ない。それが生きてる人間の感情や考えなら尚更。私が動くことで、どう変わって行くのか。それは、動かなければ分からない。
あ、典明君とのことも考えとかないとなあ。本当はそれなりに信頼を築いてからDIOと交流が有ることを教えたかった。しかし、彼と面識が有る以上それは叶わないだろう。
頭を抱えたいのを堪えて一つため息を吐く。

…お水でも飲んで頑張って寝よう。自分にそう言い聞かせ布団から出て台所へと向かった。

「…あれ、承太郎」
「なんだ、眠れねえのか」
「うん、承太郎も?」
「まあ、そんなとこだ。水、飲むか」
「ん。もらう」

承太郎と二人シンクに寄り掛かりながら水を飲む。最近本当に寒くなってきたなあ。
ちらりと隣に立つ承太郎の顔を見上げる。ジョセフおじいちゃんと並んでも遜色のない身長、会った頃よりも精悍になった顔立ち。体付きもまあ立派になったことだ。

「…さっきからジロジロと何見てやがる」
「え?あー、承太郎もおっきくなったなあと」

私の言葉に承太郎が吹き出す。え、今何か笑うポイントありましたっけ。

「お前はでかくならねえな」
「いやいやいや、最近伸びてますし!?」

私の言葉に更ににやにやと笑う承太郎の足を蹴った。…蹴った私の方が痛いってどういう鍛え方してんの君。

「じゃ、早く寝ろよ」

水を飲み終え、立ち去ろうとする承太郎の服の裾を掴む。…あれ、私なにしてんの?承太郎もポカンとしてんじゃん。手を離しておやすみと言おうとするのに、口は全く別の言葉を発した。

「い、一緒に寝てもいい?」

え、なにこのエロゲのヒロインみたいなセリフ。


「…怖い夢見て寝れねーなら最初からそういやいいだろ」
「いや、だって恥ずかしいじゃん」

呆れたような目をする承太郎から顔を背ける。結局あの後私は怖い夢を見て一人で寝たくないと説明したのだ。ほら、一回口に出した言葉は訂正が利きませんしね?誤魔化すにはそれしかなかったんだよ!ああ、恥ずかしい!
しかし、私と承太郎二人分の体温で暖まった布団は思っていたより居心地がいい。まあ、承太郎君がイケメン過ぎて緊張しまくってますがね!家族として過ごしていく内に見慣れたろ思っていたが、この至近距離はヤバい。

「まあ、魘されてたら起こしてやるよ。明日もはえーんだ。早く寝ねえと辛いぜ」
「ん。…お、おやすみ承太郎」
「ああ、おやすみ」

そう言って目を閉じる承太郎の顔を心のシャッターで切り取ってから背中を向ける。
…流石に向き合って寝れる程度胸は有りません。チキンと呼びたいなら呼べばいいじゃない!なんて居もしない誰かに逆切れしつつ、ゆっくりと夢の世界へと落ちて行った。

…結局これ以上ない程の快眠でした。人の体温ってくっついて寝るには一番いいよね。そういうことにしておこう。

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