神隠しの少女 | ナノ






家に戻り、料理の続きを始める。後は食べる前に温めたり焼いたりするだけ、となった頃玄関の開く音がした。タイミングのいい事だ。

「おかえりー」
「ただいまー」
「お土産買ってきたぞ!」
「お邪魔します」

各々私に言葉を掛けて居間に向かう。そんな中ただ一人、承太郎だけがしかめっ面をしていた。

「承太郎、承太郎」
「なんだ」
「御勤め御苦労さまでした」
「…ボケ」

スパン、と私の頭を叩くと承太郎も靴を脱ぎ捨てた。前を歩く身体に抱きつけば、振り返りもせずに頭を撫でてくる。

「ねえ、承太郎」
「あ?」
「心配事は解決したの?」

私の言葉に振り返った承太郎の目は微かに見開かれている。顔になんで分かったんだ、とでかでかと書いてあるような気がして笑ってしまった。

「家族だもん、分かるよ」
「…まあ、一応はな」
「そっか、良かったね」

そう言えば、今度はしっかりと顔を見ながら頭を撫でてくれた。…この大きな手とも少しの間離れると思うと寂しいなあ。

「おお、豪勢じゃな!」
「これは凄い…」

感嘆の声に二人で歩を勧めれば料理を見て驚くジョセフおじいちゃんとアヴドゥルさん。そしてそんな二人に何故か胸を張るホリィママが居た。
そんな状況に承太郎と顔を見合わせる。思わず笑ってしまえば、承太郎も苦笑しながら学帽を深く被った。

「よし!承太郎の出所祝いじゃ!!!」

豪快に笑うジョセフおじいちゃんの言葉を皮切りに皆箸を伸ばす。
…今日という日を忘れたくないなあ、なんて柄にもなく感傷に浸った。

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