私の言葉にDIOの顔にも笑みが浮かんだ。彼らを愚かだと笑っているのか、それとも百年前から続く因縁に終止符を打てることが嬉しいのか。それこそ私には分からないことだ。
「さて、そこで一つ賭けをしようじゃないか」
「賭け…?」
訝しげに眉をひそめるDIOに更に笑みを深めて、誘う。
「ああ、私と君の賭けだよ」
手の中に一枚の紙を出して、DIOに手渡す。読み進めていく内にDIOの肩が揺れる。くつくつと笑い出して。
「随分とくだらない賭けだな。結果が見え透いている」
「おや、そうかな?私は案外いい条件だと思うんだけれど」
DIOの目から笑いが消え、冷たいものが満ちていく。それを眺めながら、あと一押しだと察した。
「私はねDIO、君のことを信頼してるのと同じくらい承太郎のことも信頼してるんだよ」
部屋の空気が黒く塗り替えられたように感じられる。DIOの瞳の中に仄暗い炎が灯った。
「随分とあいつを買っているようじゃあないか」
「もちろん。じゃなきゃこんな賭けを持ちかけると思う?」
「…」
「あれ?まさか怖気づいた?」
「安い挑発だな」
「あれ、乗ってきてくれないの?…じゃあ、その前にもう一つ賭けをしようか」
手に持っていたトランプを差し出し、口角を持ち上げニィっと笑う。
「お互い好きなカードを選んで、数字の大きい方の勝ち。私が勝ったら、賭けに乗ってもらうよ?」
「ふん、よかろう」
お互い一枚づつ引いて、裏返す。DIOの手札はジャック、私の手札は…キングだ。
「…私の勝ち。じゃ、サインよろしく」
ピンと紙を弾いて前に飛ばす。DIOは顔色一つ変えずにサインを書きこんだ。
「さて、話も終わったし帰ろうかな。あ、そう言えば準備の方出来てる?」
「ああ。何も問題はない」
「そっか。…DIO」
「なんだ」
「君ってやっぱり優しいよね」
なんとも言えない顔になったDIOに笑いを噛み殺しながら踵を返す。…私がイカサマをしたのに気付いてたくせに、何も言わない彼はやはり、優しいと言う他あるまい。
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