神隠しの少女 | ナノ






私とホリィママは成田に居た。それはもちろん、"彼ら"を迎える為だ。
隣でそわそわ落ち着きがなかったホリィママが立ちあがり、手を上げた。

「パパ!ここよパパ!パパ!」

その声に気付いたパパ、ジョセフおじいちゃんが近付いてきた。

「ホリィ!茉莉香!」

ホリィママとジョセフおじいちゃんが仲良く遊んでいるのを微笑ましく見つめる。…関係性を知ってる私から見れば、かなりスキンシップ過多だが仲のいい親子の図だ。しかし、周囲から見れば少々歳の離れたバカップルにしか見えない。事実周囲の人間がちらちらと二人を窺っていた。それに気付いたジョセフおじいちゃんが一喝してバラバラと散って行く。そしてジョセフおじいちゃんの表情が真剣なものへと変わった。

「ところでホリィ、承太郎のことじゃが」

ホリィママが震えながら話すのを見ながら、私は今晩の食事について考えていた。折角だから出所祝いとして承太郎の好物を作るべきだろうか。私の脳内を読める人がいたとしたら、なんて能天気な、と非難されかねない内容だ。しかし、案外重要だったりもする。
ホリィママから話を聞き終えたジョセフおじいちゃんが指を鳴らすと一人の男が近づいてきた。…モハメド・アヴドゥル。私が救わねばならないうちの一人。目が合い小さく頭を下げる。彼はそれに小さく微笑んでくれたが。…少し苦手かも知れない。彼が凄腕の占い師だからだろうか?考えていることを見透かされそうな気がした。

「それで何じゃが茉莉香…先に帰って承太郎を迎える支度を頼まれてくれるか?」
「えっ!茉莉香ちゃんは連れて行かないの?」
「ホリィママ、沢山で行ったら向こうの人も困っちゃうよ。それに承太郎が喜びそうなご飯作っといてあげなきゃ」
「…そう、ね。でも茉莉香ちゃんお家まで一人で大丈夫?」
「ホリィママ…私来年から中学生だよ?それくらい出来なくてどうするの」
「うむ、では頼んだぞ。土産買って帰るからな!」

そう言って歩きだしたジョセフおじいちゃんたちを見送る。一度こちらを振り向いたアヴドゥルが何を考えていたのか、少しばかり気になった。

空港から片道一時間半はかかる所をスピリッツ・アウェイで瞬時に戻ると、さっさか仕込みを始める。と言っても既にスタンドの世界の中で粗方終わらせていたので、正しくは仕込みをしていたかのように見せる努力だ。それらが終われば、また移動しなくてはならない。…今日は忙しないなあ。一応先に皆が帰って来た時の為に足りないものを買ってくると書置きをして…と。


「やっほー、DIO」

声を掛ければDIOが目を上げた。DIOの対面に腰を下ろすと、トランプを取り出してきり始める。

「ポーカーでもやりたいのか?」
「んー?まあ、そんな所かな」

暫しの間二人の間に沈黙が訪れた。パラパラとトランプの音だけが響いた。

「承太郎にスタンドが発現したよ」
「…そうか」
「ホリィママにも見えたらしいから、時間の問題だろうね」

トランプを弄る手を止め、DIOと目を合わせる。DIOの目に映る私は、笑っていた。よし、それでいい。

「今日ジョセフおじいちゃんと、アヴドゥルさんが日本に来た。多分今頃承太郎にスタンドや君について教えてるんじゃないかな」
「…」
「私の危惧している通り、ホリィママにスタンドの適応性が無かったら…きっと彼らは君を殺しに来る」
「だろうな。むしろジョースター家の愚かさを考慮すれば、そうでなくともいつかは私の元へ訪れるだろう」
「かも知れないね。ともかく君とジョースター家にまたもや避けられない戦いが訪れようとしているわけだ」
「…今日は随分と芝居がかった言い回しをするじゃあないか」
「それに乗ってくれるDIOもDIOじゃない。…さて、話を戻そうか。…ジョースター家の性質を考えるに、彼らは娘の為に、母の為に君の元へやってくる。そして、私の思惑が上手く行ったとしても、きっと彼らは進めた足を戻そうとはしない」
「この身体の恨み、と言う訳か?」
「恨みなのかなんなのかは私にも分からないけれど、ね」

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