神隠しの少女 | ナノ






本日数回目の頭を抱えたい衝動に苛まれていると、玄関から物音がして。スタンドが溶けるように消えた。それを見届けてから顔を出せばおじいちゃんがただいまと手を上げた。

「お、おかえり」
「ただいま。いい子にしていたかい」
「もちろん!…おばあちゃんは?」

笑顔で嘘をつくのが心苦しく、姿の見えない祖母について訊ねてみる。

「ばあさんなら友達の家によってパイをもらってくるとさ」
「ハンナおばあちゃんのおうち?」
「ああ」

おじいちゃんの言葉に頬が緩む。ハンナさんのパイはとてもおいしいのだ。

「マリカはシャワーは浴びたのか」
「ううん、まだ」
「明日も学校なんだから早く浴びてきなさい」
「はーい」

リビングではドラマが始まっていたが、もう今日は見る気がしなかった。なんせ今晩の私の方がもっとドラマチックだった自信が有る。


服を脱いでいると何か違和感を覚えた。そしてすぐその原因に気付く。サアっと血の気が引いた。その格好のまま飛び出ると、家に入ってきたおばあちゃんとはち合わせた。

「まあ!マリカなんて格好で「ないの!」」

おばあちゃんが何か言っているがそんなことは聞いていられない。

「お母さんのネックレスが無いの!」

亡くなった母がいつも付けていたというネックレス。あまり物を持たない主義だったらしい母の数少ない大事な形見だと言うのに!失くしてしまったのだろうか!?
自分の部屋や廊下、リビングを隈なく探すが見つからない。あまりのショックに泣く事さえできなかった。

「気を落とさないでマリカ。もしかしたら何処かの隙間にあるのかもしれないわ」
「ああ、学校で落としたという可能性もあるだろう?」

二人の励ましに小さく頷く。しかし気は晴れなかった。
一体どこで失くしたのだろう。学校や帰り道などは気をつけていた。一日の行動を思い返しながら下唇を噛みしめた時、あの館のことを思い出した。もしかしたら。DIOの館に忘れてきたのだろうか。

そう考え始めるとそんな気がしてくる。本当の所は分からない。しかし、可能性が有るのなら行かなくては。例えそんな危険があるとしても。

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