神隠しの少女 | ナノ






新入りの人たちの紹介が終わると、DIOは私とエンヤ婆を連れて広間を出た。私の話の為に移動してくれるらしい。案外こういう所気配り上手だよね。…でもそろそろ降ろしてほしいなぁ。

「DIO降ろしてー」
「お前と私とでは歩く速さが違いすぎるだろう」
「いやいや、エンヤ婆に合わせて歩いてるんだから同じようなもんでしょ」
「…筋、トレ?」

…そんな使い慣れてない略語使わなくても。ていうか疑問形だし、今更その身体の何処を鍛えるって言うんだよ。ツッコミ所が多すぎて唸ってたらいつの間にか寝室でした。

「で、わざわざDIO様のお部屋でするお話とは…?」
「ああ、茉莉香が聞きたいことが有るそうだ」

DIOに促されて口を開く。ダービー兄弟やエンヤ婆とJ・ガイル、先程見たオインゴ・ボインゴ兄弟。少ないスタンド使いがこうも血縁でまとまっているという事は、DIOの影響でジョースター家にも何か起こるのではないか…そういったことを纏めて話すと、エンヤ婆は、顔をしかめた。

「…そうじゃな、茉莉香の言うようにジョースター家の者どもに影響が無いとは言い切れん」
「やっぱり」

分かり切っていることだが、やはりホリィママには避けようがないのか。

「じゃあ、その影響によって…命が脅かされる可能性は」
「あるじゃろうな。スタンドに適応できなければ逆にスタンドに殺されることもある」
「…もしも、適応できなかった場合に生き延びる方法は」
「…ない、とは言わん」

エンヤ婆の言葉に勢いよく顔を上げる。…今、何と言った?

「まず一つは…影響を与えたもの、ジョースター家ならばDIO様が死ぬ事じゃ。まあ有り得ん話じゃが」
「一つってことは、まだあるの?」
「ああ。これは昔わしがあるスタンド使いを斡旋した館での話じゃ」
「…斡旋?」
「ん?ああ、わしは元々スタンド使いを用心棒や殺しに斡旋しとったんじゃよ。今まで館に居った奴らはその伝手で集めたんじゃ」
「ああ、そうなんだ。…ごめん続きどうぞ」
「うむ。…ある日その館の奥方にスタンドが目覚めた。後から調べたところその兄がスタンド使いじゃったらしい。しかし、奥方は元々お嬢さん育ちだったらしくてな…スタンドを扱う事が出来んかった。その日から高熱などに悩まされ衰弱していった」

…ふむ、まるでホリィママのようではないか。

「そんなある日その館に強盗が押し入ったのじゃ。わしの遣わしたスタンド使いは丁度外の仕事に行っていたらしい。帰った時館の中は血に塗れとったそうじゃ。もう生きているものは居ないと思ったその時、奥方の部屋から音がして、向かった所」
「向かった所?」
「奥方と子どもが、死体に囲まれて座っとったらしい。周りにある死体は通常では考えられん死に様だった…と言っておった」
「…スタンドの力ってこと?」
「ああ、その後奥方の体調はみるみる内によくなったようじゃ。…まあ、家はそのまま没落して行方は分からんがな」
「…つまり、自分や子どもの危機に直面してスタンドを制御出来たってこと?」

エンヤ婆が頷くのを見ながらか細い、しかし確かに一筋の光が浮かび上がった気がした。


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