神隠しの少女 | ナノ






DIOの衝撃発言から数日。あれから私は毎日のようにDIOの館に訪れていた。ただ、DIOに会いに来ているのではなく目的はエンヤ婆だった。エンヤ婆は私の知っている中で一番スタンドに詳しい存在である。DIOにスタンドの存在を教えたのも彼女だと言うし、ディアボロから高額の矢を買い取った点からみても、彼女はスタンドについて多くの知識が有るはずだ。エンヤ婆ならば、スタンドにとり殺された人間について知っているはずだ。そして、もしかしたらそれを免れる方法を知っているかもしれない。そんな一縷の望みをかけて日々待ち続けてる居るのだが…。

「呼ばれて飛び出て茉莉香ちゃーん…」
「呼んでもないし飛び出してきてもいないようだが?」

それはもう迷惑そうな顔をするDIOに手を上げながら、ベッドに座り込む。そのまま後ろに倒れ込めば、丁度DIOの腹部が枕代わりになる…が。

「硬いよう、高いよう…首痛い」
「人を勝手に枕代わりにして散々な言い様だな」
「だって本当の事だし…。で、エンヤ婆はー?」

どうせ今日もいないんだろうな、なんて思いながら訪ねてみる。…スタンド使い捜し回ってるとは言え居なさすぎでしょうエンヤ婆。

「夜に戻ってくると連絡が有ったぞ」
「まじで!?」

こっちの夜ってことは、日本は真夜中か早朝。…うん、来てすぐ会うのは無理だね。万が一居ないのがばれてホリィママと承太郎に心配かけたくないし。

「じゃあ明日またこの時間くらいに来るから引きとめといてよ」
「それはいいが。…お前のスタンドでエンヤ婆の所に行けば早かったのではないか?」
「…いや、ほら、お仕事の邪魔しちゃ悪いじゃない?」
「…思いつかなかったんだな?」
「いや、まさか…」
「思いつかなかったんだな」

…はい。思いつきませんでした。
ふむ、とりあえず会える事は確定したしどうしようかな。一応宿題も持ってきてるし、ホリィママには図書館通いということにしてあるし、本当に図書館に行くか。でも図書館よりはこの館の書庫の方が気が散らないかな。目悪くなりそうだけど。
転がりながらそんな事を考えているとDIOが急に体を起こした。ころりと身体が転がって今度は膝枕をされている状態になったのだが…。

「やっぱり硬いし高い…」

首が痛くなりそうだ。高望みと言われようともやはり膝枕ならマライアさんとか美人さんの柔らかい膝がいいよね、うん。そんな事をぼやく私をDIOは笑うこと無く見降ろしていた。…DIOさん、ちょっとお顔が怖いですよ?

「で、一体何を隠している?」
「隠してるって?」
「お前が何の意味もなくエンヤ婆を尋ねるとは思えんが?」

…そう言われてみればそうですよねー。ジョセフおじいちゃんがスタンド発現させた後ならともかく、まだですもんねー。やる気になった内にがんがんいこうぜ!とか思ってたんだけど…言い訳については考えていませんでした。
あーとかうーとか唸りたくなるのを抑えて、煙が出そうなくらい脳味噌を回転させる。えーっと、たしか嘘ついたり隠し事をする時には本当の事混ぜるとバレ難いんだっけ?DIOに通じるかは分からないが、実は未来の事知ってます!なんて言う訳にもいかないし。覚悟はいいか、おれは出来てる!

「えーっと、…DIOがスタンド出したじゃん」
「ああ」
「で、テレンスさんとダニエルさんとか、エンヤ婆と息子さんの話とか聞いてスタンドってもしかして血縁とか、あるのかなって」
「ほう…」
「もしそうだとするとさ、DIOの身体はジョナサンさんの物だから、承太郎とかホリィママとかに影響が有るかもなーと思って。エンヤ婆なら何か知ってるんじゃないかなって」
「…」

私を見降ろすDIOの目がきらりと光る。…思わず目が空を彷徨う。DIOさん目力あり過ぎですわー。

「まあ、嘘は言っていないようだな」
「へ?」
「ただ、言わずに済まそうとしている事はある、と言ったところか」

その言葉にビシッと身体が硬直した。DIOの目が細められニィっと口角が上がる。…あれ、これはちょっとヤバい、かな。

「…ふん。まあいい。無理に聞き出そうとも思わんしな」
「…ありが、と?」

DIOは何を言うでもなく私の髪を指に絡めては梳くように弄っていた。ああ、そろそろ髪切らなきゃな。

「ああ、ただ…」

赤い瞳が冷たく光る。ドクリと心臓が大きく跳ねた。

「私を裏切ってくれるなよ?」

ニィっと笑うDIOに呆けた後笑い返した。大丈夫だよDIO、君を裏切るなんて有り得ない話だ。

[ 1/2 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]