神隠しの少女 | ナノ






目を開けば、DIOが私を覗きこんでいた。

「…魘されていたかと思えばニヤニヤと笑い出して。どこかで頭でもぶつけたのか」

怪訝そうな顔をするDIOにお構いなしに抱きつく。鼻を擽る香りは、あの夢の中で嗅いだのと同じものだ。

「DIO」
「なんだ」
「ありがとね」
「いきなり何を言い出すかと思えば。本当に何処かにぶつけでもしたか…?」

べたべたと私の頭を触るDIOの手を取って目を合わせる。訝しげに目を細めるDIOに笑いかけて。

「大好きだよDIO」

一瞬目を丸くしたかと思えば、鼻で笑われた。

「貴様の様な小娘にまでそう言われるとは…。私の魅力も困ったものだな」
「うっわ、ナルシスト発言過ぎて引くわー」

だが、私のことを貴様と呼ぶ時は大概何かを誤魔化したい時だというのはとうに承知である。タックルの如く飛びついてもビクともしない身体は実に頼りがいがある。…本当に、頼もしいことだ。
お互い沈黙を保ったまま数分。私の髪をいじくるDIOの指にまた眠気が襲いかかってきた。また、少し寝てようかな、なんて思っていた所にDIOが口を開く。

「で、お前はまだ居てもいいのか」

顎で指された時計は二時過ぎを指している。…え、二時?ってことは、日本は…九時ぃ!?
ヤバいヤバいヤバい。いくら遅くまで寝てると言っていたとは言えもう二人とも起きてる筈だ。飛び跳ねる私を笑うDIOを睨む。

「なんで起こしてくんなかったのぉぉぉ!」
「よく寝ていたからな」

理由になってるけどなってないよ馬鹿!半泣きになりながら靴を履く。…ぱっと見朝の散歩に行って来たって言ってもおかしくない格好だよね!よし!帰ろう!
スピリッツ・アウェイを呼び、DIOに振り替える。

「じゃあ帰るから!」
「ああ。…ああ、そうだ茉莉香」
「何!?」

急いでいるのに何だよ!私の精神に同調しているのか、スピリッツ・アウェイが肩に手を置く。このままだと聞かないで行っちゃうからな!そう言おうとした瞬間。

「私にもスタンドが発現したぞ」
「はっ!?え、ちょっ!?」

ちょっとそれ詳しく!と叫ぼうとしたが、もうそこは見慣れた公園の中で。
確かにね!行った当初の目的はその確認だったけどさ!すっかり忘れてた私も悪いけどさ!

「急過ぎんだろーがよぉ!!」

犬の散歩をしている人にそれはもう変な眼で見られました。

混乱しながらも家にたどり着く。玄関を開ければホリィママが飛びついて来た。

「茉莉香ちゃん!どこ行ってたの!」
「あ、朝の、散歩に…」

痛い。背骨がミシミシ言ってる…!細っこいのにこの馬鹿力…流石承太郎の母と言うべきだろうか。

「茉莉香痛がってんぞ」

いつの間に来たのか承太郎が呆れ顔でそう言うと、やっとホリィママは離してくれた。

「もう、今度から寝てても起こしていいからどこか行く時は行って頂戴ね!」
「はーい」

私の返事に満足したのか、ご飯食べなさい!と鼻歌を歌いながら台所へ去って行った。切り替え上手ですねママン…。なんだか朝から疲れたな、と思いながら靴を脱ぐと、未だにそこに残っていた承太郎と目が合う。

「…えっと、ただいま」

そう言えば、頭に大きな手が乗せられる。…高校に入ってから更に成長が速くなってませんかお兄さん。男子三日会わざれば刮目して見よとはこういうとこか…!

「おかえり。…あんまり心配かけんなよ」

少し目を逸らしながらそう言う承太郎にキュンときた。それはもう盛大に。

「うん!ごめんね!」
「…笑いながら謝ってんじゃねーよ」

そう言いながらも抱きついた私を引っぺがさないのは愛だよね!うん、愛だ!
最後の最後にDIOの落とした爆弾発言のショックも、承太郎のおかげで随分と和らいだのだった。

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