神隠しの少女 | ナノ






空条家に来て数日が経った。
ようやく肩の力も抜けてきた、と言うところだろうか。まあ、まだ敬語は抜けきっていないし、ホリィさんと呼んでしまう事も多いが大きな問題はない。

「茉莉香」
「はい?」

冷え切った縁側に寝っ転がっていると承太郎に呼ばれる。行儀が悪いかとも思ったが、そのまま首だけを動かして彼を見上げる。14歳男児の平均身長よりもやや高い承太郎の表情ははもちろん逆光によって見分けられなかった。

「珍しいな」
「珍しい?」
「ああ。普段は母さんと庭の手入れとかしてるだろ」
「今日は特にすることがないみたいで。ホリィさんも用事あるみたい。さっき出かけたよ」
「ふーん。…寒くないのか?」
「大丈夫」

確かに冬の縁側は寒々しい。しかし、妙にその冷たさが心地よかった。それに寒くとも動かなかったかもしれない。なんせ、妙にだるいのだ。
…あれ、もしかしてこれって。
恐る恐る腕に手を乗せれば、明らかに普段よりも熱く感じる。やはり、熱が出ているようだ。思わずため息をつきながら目を閉じる。

ぼんやりとしてきた頭を回転させる。ホリィさんは出かけて行った。昼食は作ってあったはずだけど今は食欲はなし。薬はある場所が分からない…オーケーオーケー。氷枕持ってさっさと部屋に退避しよう。
あーでも承太郎に熱が有ることは言うべきか?心配かけんのもあれだし、看病とか慣れてなさそうだし。言わない方がいいか。あー、いや、でもバレたらまたホリィさんが涙ぐむかも…。
グダグダと考えていると頭痛がしてくる。…なんで熱が出るとこんなにも鈍くなるんだ。だからDIOに人間はもろいとか言われんだよ。

何故かイライラしている私の上に影が出来た。
額に乗せられた大きく冷たい手に大きく息をつく。ああ、気持ちいい…。

「…こんな所に居んのに顔が赤いと思ったら。熱あるじゃねーか」
「うん、私も今気付いた」

目を開けて顔を覗き込む承太郎に苦笑する。ああ、熱がなかったら多分至近距離過ぎて違う意味で赤面してただろうな。承太郎のアップは中々攻撃力が高い。
嫌がる身体に鞭打って上半身を起こすとくらりと目眩がする。結構熱高いのかな。風邪をひくこと自体久々過ぎて分からない。
揺れそうになるのを堪えてなんとか立ちあがる。

「ごめん、私部屋に戻るから…。お昼ご飯冷蔵庫に入ってるから食べてね」
「おい」

歩きだそうとした所を引っ張られバランスを崩す。踏ん張ろうにも足が言う事を聞かない。来るであろう衝撃に備えたが、それは承太郎によって阻止された。

「あ、の…?」
「ふらふらじゃねーか。部屋まで連れてってやるよ」

そう言うとさっさと私を抱き上げる承太郎。

「え、あ!お、重いから!」
「重くない。むしろもっと食べたほうがいいんじゃないか」

落とされると困るがこの状況も対応が分からない。結局身動きが取れず、承太郎に抱きかかえられたままベッドまで連れてこられた。

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