※相互記念作品





私に彼の何がわかるというのか。

生活はそこそこ苦しかったものの、生死に関わるほどではなかった。
両親は私に優しく、時に厳しく、快活で大きく笑い、よく働いた。
間違っても、私に酷くすることは有り得なかった。

わからないのだ、私には。
彼の苦しみも悲しみも行き場のない怒りも、何をしようとしているのかも。
何も話してくれないから、何も聞けない。手首に見つけた青黒い痣が、唯一彼の境遇を物語っていた。

彼とその家族に近づくなと両親に叱責され、それでも私は会いに行った。
目を離している隙にいなくなってしまう気がしたのだ。
それだけ彼の存在は儚かったし、盗み見た横顔は胸を抉られるようだった。
彼の隣に座るだけで、彼はどこにも行かないと思い込んだ。
瞳を真っ直ぐ見つめていれば、彼の心は熔融すると信じていた。


「……悠」

私にはわからなかった。どうすれば彼が優しく生きることができるのか、答えを出すことはできなかった。
相談するよう言えば良かったのか。逃げることを教えれば良かったのか。
ただ隣に座ることが、彼のための最善だったのか。
それなら何故彼は血塗れで立っている?

「かおる、」

舌が上手く動かない。一歩踏み出そうとして、やめた。

「悠、ありがとう」

嫌だ、感謝なんてされたくない。私は貴方を救えなかった。一緒にいくことさえ出来ない。
どうすれば彼を止められる?彼が自らの心を話さないなら、私が言うべきだろうか。
私の憤りや嘆きを、すべてぶつけて困らせようか。
……なんて、

「元気でね、薫」

自分を傷つける全てを壊した彼に、私の想いなんて届くものか。

「ああ。悠もね」


薄く微笑んで、薫は血の海を去った。




絶対的な終焉




*****
font:7
color:#a52a2a
Title:白々

雪子様へ相互記念 『薫で切ない話』

切ないどころか無糖になりました…意味分からない文で申し訳ないです。
これから、どうぞよろしくお願いします。
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