シュガーメルトダウンと微妙につながってます







薫くんに怒られるのは、結構好きだったりする。

あ、そういう趣味とかじゃなくて、なんていうのかな。
怒ったときの、少し下がった眉と、細めた目に滲んだ優しい色、面倒くさそうな声音の後にくる温かいため息とか。そういうものが、私を優しい気持ちにさせる。

こんな鈍い私に付き合ってくれる彼はとても優しいので、絶対本気で怒ったりしない。こっちがどんなに悪いことをしたって、私の言葉にはちゃんと返事をしてくれる。千鶴ちゃんのことになると少し怖いけど、私を見る薫くんの目は、ちゃんと私を映している。
だから、やっぱり

「薫くん好きだなあ」
「……マジで?」
「?うん。優しいじゃん」
「(それはお前にだけだよ…)そーか、南雲か…」
「平助くんは薫くん好きじゃないの?」
「えっ、は?」
「え」

どうやら色々と食い違っていたらしい。

「あっ、恋愛感情じゃなくて、違、」
「いや、その、うん。なんか悪ぃ」
「本当にね」

平助くんの後ろに薫くんがいた。
驚いた平助くんは慌てて立ち上がり、机に肘をぶつける。

「ってぇ!」
「悠、行こう」
「え、いや、平助くんが…」

私の腕を掴み、ぐいぐいと引っ張る薫くん。……かなり、痛いです。
涙目で呻く平助くんと目が合い、助けを求めようとしたら思いっきり目を逸らされた。なんでだ!

「ほら、ちゃんと歩いて」

やっぱり薫くん優しくないかも……。
急いで歩幅を合わせる私に気づいたのか、薫くんは歩くスピードを落としてくれた。
うん、やっぱり優しい。

「ほんと、南雲って悠好きだよな…」

ぽつりと呟いた言葉は、昼休みの喧騒に溶けた。


恋をかじった味がする
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