手にした武器は今までに無いくらいの重量で、少し泣きそうになった。励ましを求め足元を見遣るが、当然彼はいない。ぐるぐると渦を巻く天を見上げ、震える身体を叱咤する。この村の運命は私にかかっているのだ。失敗は許されない。何としても、嵐竜を討伐しなければ。

「勝つ」

 一言だけ囁いて、唇を真一文字に結んだ。君が帰ってくる場所を守るためなら、一人だって戦えるよ。何も出来なかった私を導いてくれたのは君だから。にゃあと鳴く彼と溜息をつく彼が交差する。複雑な気持ちは、とりあえず仕舞っておこう。ハンマーを握り薬草を確認する。大丈夫、今回ばかりは忘れない。皆の住む場所がかかっている。それに、本来此処を守るのが私の仕事。大丈夫、大丈夫、大丈夫。大丈夫!

『少し、心配です』

 風が頬を掠めるように、脳に言葉が浮かんだ。一年経った今でも、私は彼を待っている。彼は私を覚えているだろうか。

 雷鳴が低く轟き、私を急き立てる。私はゆっくりと歩き出した。
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