旦那さんは努力家だ。簡単な採集クエストくらいなら難なくクリア出来るようになって、ハンマーに振り回されることもなくなった。帰ってきて十分体を休めた後、温泉に行く。出たら訓練所で修行。旦那さんは、頑張っている。

「おい、聞こえてるか」

 今日も張り切って演習しに行った旦那さんを待つ。様々なことを考えながら座っていると、声をかけられた。どうやら数回呼ばせてしまったらしい。慌てて振り向くと、厳つい顔の男がいた。薄っすらと笑みを浮かべていて、なんだか卑しい印象を受けた。

「お前は主人と温泉に入るだろ?」
「……そりゃあ、入りますニャ」
「どんななんだ?」
「……?」

 どんな、とはどういうことか。品の無い表情を見上げながら思案する。主人との裸の付き合いはなかなか落ち着くものだ。飲み物を貰うのが楽しみ。ただそれだけだ。この男はそんなことを問うために己に声を掛けたのか? 人間というのは不思議な生き物だ。
 痺れを切らして、男が口を開く。不快な空気が辺りに漂い、僕は唾を飲んだ。

「お前の主人、なかなか良い身体してんだろ? 詳しく教えろってことだ」

 炎が身体中を走り抜けた。カッと熱くなった武器を手に、しかし攻撃はしない。射殺すような目つきで相手の目を見た。余裕の色と、少しの情欲が滲んでいる。下劣な、こんな奴に旦那さんを汚されてたまるものか。下らない感情を持っていながら、よくハンターになれたものだ。

「二度と、旦那さんのことを口に出すな」

 得物の柄をギッと握り、凄んだ。心なしか目の前の男が小さく見える。情けない悲鳴をあげて逃げ去る姿は滑稽だった。
 乱れた息を整えていると、聞きなれた足音がした。振り返ると、いつもより酷い格好の主人。顔には眩しいくらいの笑顔がある。

「ドスジャギィ倒せたよ!」

 旦那さんは、肉食獣をも倒せるようになっていた。
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