旦那さんはかなり不器用でそそっかしかった。そんな人が刃物を扱うとどうなるかなんて分かりきっている。太刀を持ちたいという彼女を必死に説得し、ハンマーを持たせた。不満そうな顔をしていたけれど、こればかりは譲れない。
 旦那さんは女子としてはかなりの運動神経を持っていたけれど、ハンターとしてでは弱いどころの話ではない。それに加え持ち前の鈍臭さがあるから、僕は何度も絶望した。クエスト中初めてガーグァと対面し、思わず悲鳴を上げた主人は何を思ったか群れの中に突っ込んでいった。野生の彼らは飼われているものより少し大きい。旦那さんは小柄だった。当然あの丸く大きい体に弾き飛ばされ、地面に頭を強く打ったらしい彼女はめまいをおこした。急いで旦那さんを殴り、(もちろん加減した)僕は人知れずため息をついた。草食獣相手にこれではジンオウガなんて夢のまた夢だ。「ちょっと、手伝ってよお」声のするほうを見ると、泥だらけの主人が薬草を摘んでいた。ほんとうに世話のかかる人である。


「わたし、頑張るね」


 ハリの実を両手いっぱいに持ち、旦那さんは言った。僕はなんと返したら良いのか分からなくて、一声にゃあと鳴いた。
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