悠が帰ってこない。近辺を探しに行った平隊士たちも戻らない。一くんは巡察を兼ねて町で聞き込みをしに出ていった。総司は、たぶん部屋で休んでる。

 馬鹿なことをしたと、何度悔いたかわからない。何故引き止めなかったんだろう。いや、その前に、もっと話しかけておけばよかったのかもしれない。彼の中に立ち入って、全て聞き出してしまえば、行ってしまうことはなかった。

「平助、しっかりしろ」

 左之さんは、睨むように此方を見ていた。頭にきて、思わず声を張る。

「じゃあ、左之さんは悠がどうでもいいのかよ?! 俺が、俺たちが、もっとちゃんとしてやれば、あいつは行かなくて済んだんだ……!」
「起こっちまったことを考えたって仕方ねぇだろ! 今からやれることを考えろ!」
「おい、二人とも落ち着けよ。千鶴ちゃんが怯えてるだろうが」
「っ……」

 新八っつぁんの隣で、不安げに瞳を揺らす少女。彼女とは対照的な顔立ち。

「あいつを守ってやれたのは、俺とお前だけだった!」

 責めるべき相手を間違っているのは重々承知していた。だが、沸き立つ怒りが口をついで出てくる。目頭が熱くなって、脳が沸騰したように感じた。

「……千鶴、何で止めなかったんだよ……あの時、傍に居たじゃんか……!」

 千鶴は、ぶるぶると震え始めた。はたと我に返り、流石に言い過ぎたと後悔したが、謝罪する前に彼女は口を開いた。

「ごめんなさい……私が、私がそのまま行けばよかったのに」

 しん、と静まった。指先が急速に冷えていく。震え続ける少女は、いつかの彼女と同じ顔をしていた。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -