記憶が飛び飛びで浮かび上がる。土方さんが部屋に来て、なにか言っていた。藤堂くんもご飯やら何やら差し出してくれていたけど、私は食べるどころか身体を動かすことさえ出来なかった。原田さんに頭を撫でられ、永倉さんからお酒を貰った。飲めないのに。近藤さんの「大丈夫だ」という声だけが耳に残っている。山崎さんは何分おきかに脈を計りに来た。沖田さんはどうしているのかわからない。
 知らない人も沢山来ていたと思う。此方は存在さえ知らないのに、必ず何かを置いていった。大半は食べ物だった。――どうしてこんなことに? 私、いつから寝ていたんだろう。

 千鶴ちゃんが、たぶんおやすみなさいと言って出ていく。ずっと居てくれたみたいだ。干乾びていて上手く機能しない喉を振り絞る。

「千鶴ちゃん」
「は、はい」

 瞼が重い。細く広がる視界に、髪を解いている千鶴ちゃんが入り込んだ。

「自分に嘘をつかないでください」
「え?」
「自分の気持ちに自信を持ってください。何があろうと、相手を想う気持ちは大事にしてください。沖田さんも、貴女と同じ気持ちを貴女に抱いています」

 いつ訪れるかわからない、重要なルート選択を誤らないよう。千姫の問いに答えられるよう。私自身が平穏に過ごせるよう。多少揺らいでいても、知っている未来を歩む為に。

 睡魔がやさしく悠を包む。黒にどっぷり沈んで、もう何も考えられない。


 千姫が新選組を訪れるのは今夜だというのは、悠自身予期していなかった。
 これが新選組で過ごす最後の夜だということも。



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