藤堂平助と斎藤一はもう行ってしまっただろうか。 何かしなければいけない気がして、でも出来ることといったら、なるべく隊士と接しないで掃除をする、ぐらいで。 集中してやらなければ出来ない仕事があれば、その一点へ考えを向けることが可能だ。お化けも南雲薫も、血を噴き出して倒れるあの光景も蘇らない。しかし、そう都合の良い仕事は回ってこず、布切れを水に浸し、ギチギチと絞るその瞬間に、絞殺されかけた記憶がふわりと上がってくる。雑巾がけの最中に、羅刹に追われ夜道を駆けたあの焦燥が沸き起こる。 原田さんの「会いに行ってやれよ」との言葉に緩く首を振ってからかなり経った。二人は行ってしまった。きっと、絶対。 「悠」 振り返る。嫌な予感で胸が苦しくなった。 「……へいすけ」 旅支度がすっかり整った、さて出かけようという姿なのに。 藤堂平助は困ったような顔をして、それでも僅かに笑っていた。 「……た、ただいま」 |