傷だらけの私を見て、山崎さんは一瞬言葉を失った。だが流石新選組きっての監察方、すぐ我に返り、血のこびりついた私の手を掴んで建物の間に入った。任務の為か、山崎さんは薄汚れた着物を着ていて、私のぼろぼろ具合と見比べても違和感はない。小汚い少年と男が路地に入るのを気にしする人間は、おそらくいないだろう。

「とりあえず送る。此処で待っていてくれ」

 壁の小さな戸を開け、素早く中へ滑り込んだ山崎さんに、怒っている様子は見受けられなかった。出会いがしらすぐに渡した手紙は少々汚れていて、申し訳なさで喉が苦しくなる。色んな情報が混ざり合って、どうしたらいいのか、何を言えばいいのかわからなくなっていた。早く帰りたい。
 ……どこに?

「これで拭け。少し目立つ」

 渡された手ぬぐいで頬の血や泥を拭う。若干ぼうっとしながら、山崎さんが支度をするのを待っていた。が、彼は任務中であった筈だと思い起こし、慌てて止めに入った。

「あの、重要な任務なんでしょう。大丈夫です、一人で帰れます」

 鋭い眼差しが目の奥を突き刺した。それも一瞬のことで、すぐに元の色に戻った。竦みあがった背は緩やかに抜けていく。

「直接副長に伝えたいことがある」

 それだけ言い残し、すっかり町民に化けた男は路地を出て行った。躊躇いながらもその背を追い、考えることはひとつ。

 ――突然任務を放り出す人であっただろうか。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -