通りすがり様にぶつかった高校生が何とも奇妙な帽子? を持っていたので、反射的に後を追ってしまった。少年からか、その帽子からかはわからないが、懐かしい匂いがしたのだ。パンプスがきちきちと鳴っている。なんだか悪い予感がした。

 満員電車に飛び込んで、人ごみを掻き分け少年を追う。冬だというのに汗が滲んで、髪が額にはりついた。至る所に置いてある、メカニカルな黒いテディベア。――この電車に乗ってはいけなかった。ふとそう思ってみても、既に発車してしまったものは止められない。

 世界が黒くなる。ワインレッドの輪がくるくる回る不気味な世界を垣間見て、思考は暗転した。



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