地球は爆発するらしい。黒子くんはいつもさざ波ひとつ立てない瞳をゆらゆらさせて私を見ていた。

「恋人として、きっと、たぶん、最後は二人きりで一緒にいるのが正しいのだと思います」
「うん」
「でも僕は」

 黒子くんのほっそりとした手が、使い込んであるバスケットボールに力を込めた。

「……飲み物とタオルを持って、観戦すれば良いのかな」
「……」
「ベンチ、入っちゃ駄目ですか?」
「……大丈夫ですよ」

 きっと、火神くんやあの黄瀬くん、青峰くんも来るんだろう。日向先輩は勿論、監督さんだって。

 優しく黒子くんの手を掴む。滑り落ちたボールは数回跳ねて、何処かへ転がってしまった。

「ごめんなさい」

 謝らないでよ、私はバスケが好きな黒子くんが好きなんだから。そう言おうとしたものの、いくら口を動かしても音が出てこない。地面がぐにゃりと歪んで、私は底の無い闇へ真っ逆さまに落ちていった。



「……という夢を見たんだ」
「リアルですね」
「うん」

 点滴がぽつぽつと落ちる度に血管が清浄な水で満たされていく。にも関わらず、私の身体は腐っていってしまう。

「黒子くん、バスケしてきて良いよ」

 ベッドの傍らで小説を読んでいた黒子くんは、私の言葉に目をぱちぱちさせた。瞳は欠片も揺らいでいない。

「今はあなたの傍に居たいです」

 はっきりと言い切って、静謐な目は再び文字を追い始めた。使い込まれたバスケットボールは、私の膝の上にある。指の腹でつるつるの表面をそっと撫で、堪えきれず笑みが漏れた。

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