☆白が好き?


 馬鹿なことをした。彼も、びっくりした顔で私を見ている。ぶわっと汗が吹き出て、日差しが熱くて、もう、どうにかなりそうだった。

「しかし、いや、これは」

 彼の目がぐるんぐるんと忙しく回る。今にも爆発しそうなくらい真っ赤になった頬。先ほど、私はそこに唇を押し付けた。すべすべしていて、綺麗な肌だったから、寝顔が可愛かったから、反射的に。本能的に。

「ご、めん、なさい」

 真田くんがパチリと目を開けた瞬間の絶望が、今も心を焼いている。ああ、だの、うう、だの声を漏らしながら口をもぐもぐさせる真田くんは、私の謝罪に更に目を丸くした。ぱくぱくと口を開閉するも音は出ない。数秒の間の後、突然、何を思ったのか幸村くんは縮こまる私を抱き上げては降ろし抱き上げては降ろした。つまり、小さい子にやる、たかいたかーいというあれである。叫ぶ代わりにパニックを起こしたらしい。私はどうすることも出来ず、猿飛くんに救出されるまで離陸を繰り返した。

「あんたら本当に馬鹿だよね」


★それとも黒?

 一人で寝るのが寂しくなって、幸村が寝ている部屋にそっと忍び込んだ。ぐうぐういびきをかいている。これはどちらにせよ寝れそうにないなとため息をつきながら、細く引き締まった身体の隣に寝転がった。普段剥き出しの腰に背をぴっとりとくっつける。ふわっと柔らかな香りがして、堪らなく幸せな気持ちになった。
 いつの間にかいびきは消えていて、代わりに、うーん、という唸り声と共に長い腕が伸びてきた。左耳が幸村のお腹にくっつく。コロコロ、キュウゥ、と鳴く内臓が面白くって、更に耳を押しつけた。

「……う……あ、え!?」

 頭上にて叫び声。ああ、起こしてしまったか。寝惚けている振りをして、そのまま抱き着いていると、幸村は震える声で何度か私の名前を呼んだ。寝たふりをする私の肩を掴んでゆさゆさ揺する。起きてくだされ、具合が悪いか、何か悪夢を見たか、どうしたのか。矢継ぎ早に問われ、流石に可哀想になったので目を開こうとしたその時。獣の唸り声に似た低い声が、そうっと囁いた。

「……それとも、据え膳というものか」

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