「オトコは誰だってオオカミで、ええっと……つまり、なまえなんてペロリと喰べてしまえるのよ! 気をつけなさい! そしてスカートが短すぎる!」
「ギャリーはおんなのこだから大丈夫よね?」
「は!?」
「お泊りセット持ってきたの。ご飯つくるの手伝うよ」
「いや、ちょっと……こんな話し方だけどアタシは男で」
「イヴがギャリーは男の人が好きって言ってたもの。オニオンスープで良いかしら」
「アタシはオネェだけどオカマじゃないわよ! だからお泊りは駄目! 玉ねぎは机の下の箱にあるわ!」
「大声出したら近所迷惑よギャリー。デザートは要る?」

 仕事から帰ると、紺色のプリーツスカートをひらひらさせたなまえが大きな鞄を持って玄関に立っていた。とりあえず中に入れて話を聞いてみると、仲の良かった男友達から突然告白され、相談をしに来たらしい。どうしたら良いかと聞かれ日ごろ思っていたことをぶつけてみたけれど効果は無かった。それにしてもスカートが短い。白い太ももが公衆の前に晒されていると思うと叫びたくなる。と同時に自分の本能が姿を現しそうで恐ろしい。

「なまえは可愛いし、素敵な女の子よ。だからそろそろ恥じらいを持つべきなの」
「ありがとうギャリー。あなたから可愛いって言われると、他の誰に言われるより嬉しいわ」
「話を聞いてちょうだい」

 髪を結い上げたなまえは私の言葉を無視して料理を作り始めた。説教しようと背後に立つと、細い首に自分の影が落ちて、思わず喉が鳴る。……駄目だ、やっぱり泊まらせられない。

「早く帰っ」

 少々きつめの言葉を吐こうとしたその時、なまえは急に振り向き抱きついてきた。あまりのことに言葉も出ない。自分の胸の下あたりに小さな頭。巻きついた腕。

「ギャリー、お願い。久しぶりに夜通しお喋りしようよ。狼になっちゃっても構わないわ。一人でいたくないの」
「……あの、なまえ、はやく離れて」
「まだそんな冷たいことを言うの? 私はギャリーがちゃんとオトコノコって知ってるわ。大丈夫よ」
「だ、大丈夫じゃない。大丈夫じゃないわ」

 震える声で訴えると、なまえは顔を上げ私を睨んだ。涙で潤んだ瞳に電球の光が映ってキラキラと美しい。

「ギャリーのいじわる!」

 もう、限界だ。




『ギャリーさんが本能と戦う』


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