ぼく、
へんなきぶんだよ




頬から目元を赤く染めて、苦しそうに息をしている。ぷっくりと赤い唇から涎がたれていて、男とは思えないほど扇情的であった。首の下に手の甲を押し当て、冷やしてやる。

「ギャリー大丈夫?」
「っだ、だいじょ……大丈夫じゃ、ないわよっ!」

威嚇する猫のように私をねめつけ、乱れた上着を調える。女の子みたいだ。つるんと白い肌も、くるくるの髪も、可愛い。これでたばこ臭くなかったら良かったのに。

「もう、なんでそんなにキス上手なの! しかもあたしにしなくたって!」

ギャリーは私の手をどかして私を持ち上げる。こめかみに汗が滲んでいて、とても暑そうだ。上着を脱いだら涼しくなると思うけど。
紅潮したままの頬に手を添えた。私の手はいつだって氷のように冷たい。迷惑かけたぶん心地よく思ってくれるように、少しでも体温を移してあげようと思ってのことだった。が。

「……なまえ、お願いだからやめて」

ギャリーは私をソファーに降ろし、頬の手を乱暴に払った。ざくり、心臓に突き刺さって、私は喉を詰まらせる。とろとろとあふれる赤い赤い血にすべて塗りつぶされてくるしくってかなしくって、目に水がたまってきた。だめ、だ。コロンと悲しい色をしたアメジストが転がった。ギャリーは目を見開いて私を見ている。

「ごめん、ごめんなさい。ごめんなさい」

紫紺の髪も象牙の肌も桜色の頬も全部ぼやけてあやふやになった。膝の上に宝石がたまってゆく。コン、コツ、カラカラ……何個か床に落ちてしまった。もうなにもわからない。

「ギャリー、」

次の謝罪を言おうと開いた唇に、覚えのある柔らかいものが押し付けられた。肩に置かれた手が私を押し倒す。舌が拙く動いて、突然のことに反応できない私は応えることも出来なかった。ちゅ、と離れた後に耳をかすめる、「ごめんなさい」ああ、そうか。ごめんねギャリー。




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